シネマ歌舞伎「天守物語」感想
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天守に住まう異界の姫と若武者の悲恋白鷺城の最上階にある異界の主こと天守夫人の富姫が、侍女たちと語り合っているところへ、富姫を姉と慕う亀姫が現れ、宴を始めます。その夜、鷹匠の姫川図書之助(ずしょのすけ)は、藩主播磨守の鷹を逃した罪で切腹するところ、鷹を追って天守閣最上階に向かえば命を救うと言われ、天守の様子を窺いにやってきます。海神別荘もそうだけれど、本当に歌舞伎の姫は一瞬で恋に落ちる。そしてその恋...
シネマ歌舞伎「海神別荘」感想
海底にある宮殿琅玕殿(ろうかんでん)の公子と、地上の美女の恋を描いた物語。幻想的な宮殿での幕開きに続いて、黒潮騎士に囲まれた美女の輿入れへと、美しい場面が絵巻物を広げるように展開します。公子と美女が対面し、水底の世界の素晴らしさを語り聞かせる公子と、俗世界への未練を残す美女との対話は名場面であり、鏡花ならではの美しい台詞を楽しめます。そして伴奏音楽にハープを用いて、より幻想味を高めているところが坂...
シネマ歌舞伎「鷺娘/日高川入相花王」感想
今や映像でしか見る事の出来ない玉三郎の世界。『日高川入相花王』人形浄瑠璃を歌舞伎舞踊化した「道成寺物」の作品で、人形振りでみせる趣向となっています。恋する安珍を追って日高川の渡し場にたどり着く清姫ですが、船頭は川を渡してくれません。 安珍への嫉妬と恨みの激情を燃やす清姫はついにー。清姫:坂東玉三郎人形遣い:尾上菊之助船頭:市川九團次人形振りが面白い。ちょっとカクカクとした動きの表現が、何故か清姫の...
歌舞伎座 鳳凰祭四月大歌舞伎 新・陰陽師
歌舞伎座新開場十周年記念「鳳凰祭四月大歌舞伎」昼の部は「新・陰陽師」夢枕獏「陰陽師 滝夜叉姫」の歌舞伎化だという。筋立ては良く知る平将門の乱。そこに征伐に向かう俵藤太、将門の妹滝夜叉姫、怪しき興世王、暗躍する道満、その渦中に晴明と博雅の姿がある。演ずるはスーパー歌舞伎IIでもお馴染みの面々。若手の活躍も嬉しい。有限な陰陽師の世界を求めて来た向きには、違和感を覚えるかも知れないが。原作に沿いながらも、...
シネマ歌舞伎「廓文章 吉田屋」感想
上方と江戸の粋、その両方を体現する仁左衛門に酔う放蕩の末に、勘当された藤屋の若旦那伊左衛門は、恋人の夕霧が病に伏せっていると聞き、 落ちぶれた身も省みず大坂新町の吉田屋へやって来ます。 主人喜左衛門夫婦の好意で夕霧には会えたものの、伊左衛門は嫉妬のあまり、すねてつらく当たり二人は痴話喧嘩を始める始末。 ようやく仲直りをした二人のもとに届けられる知らせは...冒頭に仁左衛門と玉三郎のインタビュー映像あり。...
シネマ歌舞伎「桜姫東文章 下の巻」感想
仁左衛門、玉三郎 36年ぶりの奇跡の舞台僧であった清玄は、桜姫の不義の相手として濡れ衣を着せられ、寺を追われてしまう。かつて愛した稚児の少年・白菊丸の生まれ変わりである桜姫への執念を抱き続ける清玄は、今は病み衰え、弟子だった残月と桜姫に仕えていた長浦のいる庵室に身を寄せている。しかし、残月と長浦は、金欲しさに清玄を殺すと、墓穴掘りとなった権助に後始末を依頼。そんななか、女郎とし て売りに出された桜姫が...
シネマ歌舞伎「桜姫東文章 上の巻」感想
仁左衛門、玉三郎 36年ぶりの奇跡の舞台僧清玄は、稚児の白菊丸と道ならぬ恋の果て心中を図るが、一人生き残ってしまう。17年後、高僧となった清玄は桜姫と出会う。彼女は白菊丸の生まれ変わりなのか。一方、家宝の巻物「都鳥」を盗まれ御家没落のため出家を心に決めた桜姫には秘密があった。かつて暗闇の中で自分を犯した男の子どもを秘かに産み落とし、今でも一夜の甘美な思い出として、その肌が忘れられずにいた。ある日、腕に...
シネマ歌舞伎「熊谷陣屋」感想
諸行無常の物語、初代吉右衛門の当たり役を当代の吉右衛門が演ずる。熊谷直実は一の谷の合戦で平敦盛を討ち取り、陣屋に戻ってくる。直実は妻の相模と敦盛の母・藤の方に敦盛討死の様子を語り、敦盛の首の検分に備える。やがて主君の源義経が現れ、直実は首を差し出すが、その首は何と直実の息子・小次郎の首。直実は敦盛を救うため、同じ年齢のわが子を身替りにしたのである。直実は悲しみをこらえ、驚き取り乱す相模と藤の方を制...
シネマ歌舞伎「籠釣瓶花街酔醒」感想
籠釣瓶花街酔醒(かごつるべ さとのえいざめ)は、花魁と客の惚れた腫れたの物語かと思いきや、籠釣瓶と呼ばれる妖刀村正にまつわる話。このシネマ歌舞伎となった舞台は、長い芝居のダイジェストであるので、ラストでいきなり刀が現れ、あまりにも唐突と思わないではないけれど、妖刀うんぬんは抜きにして、自分に恥をかかせた女を成敗した話と思えば辻褄はあうのです。州佐野の絹商人、佐野次郎左衛門と下男の治六は、江戸で商い...
新作歌舞伎「風の谷のナウシカ」感想
これは観に行かれずにいた舞台シネマ歌舞伎での上映も期間が短くて鑑賞かなわず。TVでの放映は嬉しい事です。口上でナウシカの物語の概要を説明。アニメではなく原作の全7巻の舞台化である事を語ります。これは良い趣向。メーヴェなどの表現は賛否はあろうかとは思います。王蟲の精のようなものとか、服が青くなるシーンも。何よりも歌舞伎に見慣れない人には、ナウシカの姿が許せない不細工と映ってしまう、踊りや長台詞が退屈と...
シネマ歌舞伎「三谷かぶき 月光露針路日本 風雲児たち」感想
「月光露針路日本 風雲児たち(つきあかりめざすふるさと ふううんじたち)」原作はみなもと太郎の「風雲児たち」。オープニングはみなもと先生原画のアニメ。難破してロシアに流れ着いた伊勢の漁師達が絶望と苦難の末に日本に帰国するまでの実話を元にした物語。歌舞伎とはいえ現代劇要素が多い。三谷幸喜だけに古畑任三郎のパロディも入っていました。猿之助さん凄い。片足を失いロシアに残される事が分かった時、不自由な身体で...
シネマ歌舞伎「怪談 牡丹燈籠」感想
台本は、昭和49年(1974)年に大西信行氏が文学座のために書き下ろしたもの。言葉は口語に近く人物像もより深く掘り下げられた、笑いどころも満載の現代版『怪談 牡丹灯籠』。公式よりあらすじ伴蔵とお峰は、18年ぶりに仁左衛門と玉三郎が演じ、息の合った絶妙な夫婦のやりとりを見せています。そこに、萩原新三郎(愛之助)とお露(七之助)、宮野辺源次郎(錦之助)とお国(吉弥)の二組の男女の物語が重なり、幽霊よりも怖い人...
「スーパー歌舞伎II 新版オグリ」鑑賞
先代の「ヤマトタケル」が、初めてのスーパー歌舞伎との出会い。その時に感じたものと同じ何かを舞台の端々に感じた。舞台も照明も仕掛けも進化したというのに。それが継承というものなのかも知れない。今回は中村隼人さんのオグリの初日。「ワンピース」のサンジ、「NARUTO」のサスケと来て堂々の主役。舞台映えするのは、萬屋錦之助を大叔父に持つだけではない。やはり生来の器量に自信の裏打ちがなされたのだろう。家柄も良く文...
シネマ歌舞伎「沓手鳥孤城落月/楊貴妃」感想
玉三郎を見るという事は奇跡を目にするのと同義だ。たとえ映像であってもそれは伝わるものなのだ。映像にとどめられた”奇蹟”に何度でも出会えるという幸福は、人生を豊かに出来る数少ない要素のひとつでもある。この煩雑な世界では、奇蹟を見る時間を確保する事もまた奇蹟に近い時がある。だから見逃すまいとスクリーンに見入るのだ。儚くも移ろいゆく、その一瞬を留めた奇蹟、その奇蹟の中で耀く生ける奇蹟を見るために。作品に対...
新作歌舞伎 NARUTO -ナルト- 感想
言ったことは、まげねぇ。・・・それが俺の忍道だ!!ワンピに続いてNARUTO!!!!!スーパー歌舞伎の看板がない分、更にやんちゃになった印象の舞台でした。歌舞伎よりも現代劇寄り。そして観客も普段よりも歌舞伎初心者が多い事を見越して、冒頭の義太夫節も舞台上に字幕を出して、内容がわかるように配慮。セリフもほとんどが普通の口調。歌舞伎好きにはやや物足りないものの、初めて歌舞伎に触れたナルトファンには楽しんでも...
スーパー歌舞伎IIワンピース “偉大なる世界"
舞台の興奮を「写真集」と「記録本」2冊組として収録した完全保存本。「写真集」はカメラマン・鈴木心氏が影した写真で舞台を再現。「記録本」は出演者証言、猿之助氏特別対談、スタッフ制作裏話、尾田栄一郎描きおろしイラストを掲載するなどスペシャル情報を収録。ワンピースの原作は読んでいるけれど、それ以外は余計な情報は入れずに観た舞台。初演も再演もとても楽しかった!!本を読んで、あらためて自分が感じた事は間違い...
歌舞伎座「三月大歌舞伎 義経千本桜 渡海屋・大物浦」
銀座まで用事があったので、歌舞伎座に寄ってみたら、運良く一幕見席が取れました。二段目の切。安徳帝が実は生き延びて、知盛に匿われ、さらに義経に保護されるという。知盛は清盛の四男、平家の中でも優れた武将であった人。「見るべき程の事をば見つ」の台詞でも有名。歴史とはかなり異なる筋ですが、そこはそれ、お芝居ですから。魚づくしの台詞など聞かせ所もあり。仁左衛門の知盛がイイ!!長刀を手に白装束を血に染めての壮...
シネマ歌舞伎「女殺油地獄」感想
仁左衛門の着流しが素敵過ぎる!!こうやってかつての舞台を保存出来るのは良い事だと思うのです。勿論、ナマで見るに越したことはないのですが、歌舞伎座は遠いのです。物理的な距離だけではなく、まずは席の確保からして大変だし。この方面に気合を入れる事がかなわない日常になってしまった今、シネマ歌舞伎が近場で上映されるのは、とてもありがたい事です。この時ではないですが、舞台を観ています。与兵衛は今でいうニートで...
シネマ歌舞伎「阿古屋」感想
ただ舞台を映像にしたのではない。冒頭で、多くの人々が、その技が、大道具、小道具、楽器その他諸々が舞台を支えているかを、玉三郎の語りで教えてくれる。すべてのエネルギーが高まり、どんどんと開幕の瞬間へと集約していく緊張感。ドキュメンタリー仕立てから、黒・柿・萌黄の歌舞伎座の定式幕が開いた途端、芝居の世界へとなだれ込んでいくすべて・・良い構成。『阿古屋』は通称「琴責め」とも言われ、琴・三味線・胡弓の三曲...
シネマ歌舞伎「阿弖流為〈アテルイ〉」感想
いのうえ歌舞伎を本物の歌舞伎役者で!!これはある意味反則ですよ!!w昨年7月の新橋演舞場の舞台、行かれずに泣いた舞台を、映像とはいえ見られたのは、まず嬉しかったです。中島かずき作、いのうえひでのり演出ですよ、劇団☆新感線好きの私としては興味ありまくり、未練ありまくりでしたから。内容は、いつもの味です。(良い意味ですよ!!!)それぞれにわけありの人物、まっすぐな人間であればあるほど、闇に翻弄されていく...