映画「あなたへ」感想

静寂の中、過去からの声に耳を傾ける

今日知った何かを胸に、人は未来へと歩き出す

”ありがとう”

あなたへ、そしてすべての人へ

極端にＢＧＭの少ない映画。聴こえて来るのは、生活音。道端で叫ぶ子供の声、車の音。潮騒、風の音。観客の感覚は映像へと集中していく。そこに健さんがいる。あらゆるものを含んで隠して、そして感じさせてくれる健さんがいる。

健さんは無駄な説明はしない。

出会う人々に自分の事を必要以上に語らない。相手に詮索もしない。饒舌な映画が多い中、これは稀有な事。それは健さんだから可能だった映画。そこにいるだけで、多くを語る姿があれば、余計な言葉など不要なのだ。



振り返るだけの人生を持てば持つほど、この映画を深く思う。あの天空の城に響く「星めぐりの歌」の余韻をいとおしむ思いが、おのずと沸いて来るだけの人生を重ねて来たならば。

振り返らずに走る時期も、人生には必要だ。

そしていつの間にか遠くへ来てしまった自分に、ふと不安を覚え、そこで初めて振り返った時、人は何を感じるのだろう。この映画はそのひとつの答え。

正解は人の数だけある。


監督 降旗康男
脚本 青島武
製作 市川南
音楽 林祐介
撮影 林淳一郎
編集 菊地純一
配給 東宝
公開 2012年8月25日
上映時間 111分

倉島英二 高倉健
倉島洋子 田中裕子
南原慎一 佐藤浩市
田宮裕司 草彅剛
濱崎多恵子 余貴美子
濱崎奈緒子 綾瀬はるか
大浦卓也 三浦貴大
お好み焼き屋のお客 岡村隆史
大浦吾郎 大滝秀治
塚本和夫 長塚京三
塚本久美子 原田美枝子
警官 浅野忠信
杉野輝夫 ビートたけし


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