Bunkamuraザ・ミュージアム「巨匠たちの英国水彩画展」

巨匠たちの英国水彩画展

英国マンチェスター大学ウィットワース美術館所蔵の水彩画の数々。

ターナー、ラファエル前派の画家であるロセッティ、ミレイ、ハントやバーン=ジョーンズ等、日本でもお馴染みの画家達とその時代の作品が並ぶ。

疲れている時、気力がない時、油絵に向かい合うのは辛い。例外はあるにしても、ほとんどが挑みかかる何かを画布から発しているからだ。それを受け止めるだけの用意がない時には見ない方が互いの為だ。絵にも私にも。理屈ではない。名画であればあるほど強烈な、感性を貫いて来る攻撃に耐えうるのは、こちらにも覚悟が必要だ。勿論、そのすべてを理解出来るほどの眼も知識もないとしても、そんな私にも充分に伝わって来る力を有するのが名画というものだ。

水彩画はいい。心穏やかに観る事が出来る。

油絵の下絵としての気安さだからではない。軽やかな画材は軽やかな魂をそこに定着させている。重い主題もあるが、厚く塗りこめられた絵の具の底にあえぐ魂の怨念のような迫り方はしない。特に今回は風景画が多い。自然の風景は心和ませるものがある。

当時の好みを反映したカバーをかけられた椅子が場内に置かれている。疲れたらそこで休めばいい。ぼんやりと目の前の異国の風景を眺めるのもいい。

ターナー ドルトパケット-ロッテルダムからの船 【ポスター+フレーム】86 x 61 cm ステン

技術が進み、生活が変化をし、人々は縛られていた土地から旅に出る事を覚えた。英国人は山を越え、遠くイタリアへ、そして中近東へも足をのばした。かの地の風景を描いた水彩画が人気となった。現在の風景写真と同様の役割を担うものであった。丁度今、旅行雑誌のグラビアや写真集が人気であるように。人々は絵を眺め、遠い国に思いをはせ、或いはかつての旅の思い出にふけった。戦争や時勢が道を閉ざすこともあったが、画家達は異国へと赴き、絵を描き続けた。

名探偵ポワロ 全巻DVD-SET

TVドラマ「名探偵ポワロ」の中に当時の旅をしのばせる場面が幾つも登場する。ポワロも遠くエジプトまで足をのばす。

だからといって、それが芸術でないという事ではないのだ。優れた絵は絵なのだ。

そんな絵を時代にそって観た後に、シェークスピアや神話や幻想の世界を描いたロセッティやブレイクを観る。淡い色彩で満たされた心に、それらは柔らかく沈んでいく。飲み込みにくい小骨もあるが、それも淡く淡く次第に抵抗を弱めていく。

ロセッティ―ラファエル前派を超えて

ロセッティは好きな画家だ。言いたい事が多すぎて、筆から漏れてそれでも無理矢理に描いてしまったような、何処かいびつさを感じる事もあるが、その正視するよりもやや斜めから観た方が安心する絵がいい。私の心もいびつであるから。真っ当で正義感で一杯で正統で王道な絵にはない味がある。

多くを語るのは野暮かも知れない。

鉛筆の線は薄く煙り、色彩は透明を帯び、物足りなさを補う為に時にゴムや薬品を溶かしこんだグァッシュが用いられ、画家達は表現と真摯に向き合いながら、空白を埋めていく。その作業の痕を観るのも、印刷ではなく間近に本物の絵を観る楽しみでもある。

野暮かも知れないと言いながら、心に残る何がしかを書かずにはいられないのが、水彩画と言えども語りかける力を持っている証なのだ。リネンとコットンの肌触りは違えども、どちらも感慨を残していくように。




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