「声優口演SPECIAL~ヴォイス・オブ・チャップリン~」感想
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監修:大野裕之
協力:Roy Export SAS/日本チャップリン協会/イレブン・アーツ・ジャパン/とっても便利
主催・製作:チャップリン・ザ・ワールド製作委員会
口演作品:チャップリンNG集/チャップリンの質屋/チャップリンの消防士
出演:羽佐間道夫・近石真介・緒方賢一・千葉繁・若本規夫・山寺宏一・井上喜久子
素晴らしい一期一会の舞台でした!!!
「チャップリンの名作映画に人気声優がライブで声をアテるイベント」という触れ込みだったのですが、この人気声優という語句は印象がよろしくない。単に声優で良いと思いますよ。人気声優というと演技力以外の部分で”人気”を稼ぐような類の、やや軽侮が混じった響きに聞こえるからです。今回は実力もキャリアも折り紙付きの方々ばかり。わざわざ”人気”なんぞとつける必要はありませんよ。

赤坂ACTシアターの客席数1300席は満員御礼☆
年配の方が多いかと思いましたが、どうしてどうして。幅広い年齢層の老若男女が会場を埋め尽くしていました。
舞台は「チャップリンNG集」からスタート。
羽佐間道夫さん、千葉繁さん、山寺宏一さん、日本チャップリン協会会長の大野裕之さんが舞台に登場。企画・脚色の羽佐間道夫さんのリードでの自己紹介の後、秘蔵映像を大野裕之さんの解説で鑑賞。
wowowで放映されたものもありましたが、かなりレアな映像も。「街の灯」の冒頭になるはずだった7分間の映像なぞ、それだけで立派な短編でしたよ。チャップリンの妥協を許さない徹底的な映画作りを示す500以上にも及ぶテイク、その後にやっとOKとなった時のチャップリンの素の笑顔の実に良い事!山寺さんがその場で声をあてたりと、そこでしか味わえない、観に来て良かった!何という満足感 (ノ∀`)場所は赤坂という事で、5・15事件の時、丁度来日していたチャップリンが厳重な警備のホテルから消えてしまい、関係者が真っ青になったのですが、当のチャップリンは赤坂で芸者を揚げてのドンチャン騒ぎをしていたというエピソードなどもひとくさり。次から次へとチャップリン関連のエピソードを繰り出す大野さんという方は、本当にチャップリンの生き字引なのですねえ。
次は「チャップリンの質屋」
千葉繁さん演ずる質屋の番頭さんのチャップリンが繰り広げるドタバタ喜劇。作品の解説は近石真介さん。私には「サザエさん」のマスオさん。もう御歳80を超えたとは思えない変わらぬ張りのあるお声です。
舞台上は、中央にスクリーン、上手(客席から向かって右手)にフルート、チェロ、ピアノの奏者が、下手に声優陣がマイクを前に並んでいます。
千葉チャップリンを、質屋の店長や同僚、店を狙う詐欺師等を演じる羽佐間道夫さん、緒方賢一さん、若本規夫さん、店長の娘の井上喜久子さん(紅のドレスを着てまさに紅一点)達が脇を固め、テンポの速い喜劇を盛り上げる、盛り上げる!!映像とのシンクロもバッチリです!ヘッドホンで音声を聞きながらではなく、おそらくは小さなモニターを見ながらの演技、これは相当の技がないと出来ない演技だったのではと。
次は「チャップリンの消防士」
山寺宏一さんが44名の出演者全員をひとりで演じるという超絶な舞台。下っ端の消防士のチャップリン、彼をいじめる上司、そしてヒロインという良くある構図ですが、次々に繰り出されるギャグが秀逸。チャップリンの段違いのセンスと豊富なアイデアを堪能出来る逸品。始まる前に「途中で倒れるかも」と冗談を飛ばしていた山寺さんでしたが、台本を見る暇もないようなハイテンポの進行を、おそらくは全シーン全セリフを頭に叩き込んでしゃべる山寺さんの技に酔いしれるひと時でした。
映画の後は座談会。
開演前につのったアンケートの質問に出演者が答えるというもの。「一番ピンチだった時は?」の質問に、千葉繁さんがスタントマン時代に生き埋めにされてしまったエピソードを披露。井上喜久子さんにはなんと「17歳といつもおっしゃってますが、干支は何ですか?」という質問が。喜久子さん、可愛い笑顔で「パンダ」とお答えでしたw
チャップリンのお孫さんも登場。ベテランの熱演は海を越えた国の方にも十分に伝わったようです。最後は一本締めならぬチャップリン締め(?)でお開き。そんなこんなで・・・楽しかった舞台。
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チャップリンの身体能力が凄い☆
彼の映画を見た事がないわけではないのですが、こうしてあらためて映像を見ると、チャップリンの動きが実に凄い。スタントも特撮もない時代ですから、すべて生身。何というバネ、何という意表をついた計算された動き。モノクロの無声映画という限られた表現の中で、最大限に言わんとする事を伝えようとする。その素晴らしい映像に当代の名人が声をあてるのですから、面白さは相乗効果に留まらず何倍にも膨れ上がるという。最近は予算や諸々の事情か現場は若手ばかりで、ベテランの技を若手が吸収する場が少ないと聞きますが・・

まさに声の伝統芸能ですよ。
これは伝承すべき。失うには惜し過ぎる。



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