映画「オブリビオン」感想

廃墟となった地球。美しい、色のない世界。
ストーリーを追うだけでも俳優や女優を見るためだけでもなく、映像の中に作り出された世界の素晴らしさを味わうのも、映画を見る大きな楽しみである。
人間はいつも未知に向き合いながらも、すべてを知っていると思い込んでいる。灰色の世界の向こうに見えない境界線があり、そこから先に何があるかを考えないように、やんわりと制御されている。拘束があまりにも緩いので、拘束されている事すら気づかずに、人生を送っている。
60年前に宇宙人に侵略された地球は、かろうじて勝利したものの、もはや人類の住めない環境になってしまった。人々は土星の月のひとつタイタンに移住し、ジャックとヴィカのみが地球上に残って、採水プラントを保守する任務についていた。無人のドローンが生き残りの宇宙人の殲滅の為に飛び回り、ドローンが故障するとジャックが修理する。タワーと呼ばれる建物から外に出るのはジャックのみ、ヴィガは出る事が出来ない規則となっていた。もう2週間すれば、地球からみんなのいるタイタンに戻れる。そんな時期に事件は起きた。
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「月に囚われた男」と同質の、古き良き時代のSF世界の再構成。
ヴィガの衣装も「惑星ソラリス」を思わせる。
無機質な部屋、無機質な風景。何処までも荒廃した世界に、かつての繁栄の痕跡が点在する。あまりにもフラグ過ぎる「この戦いが終わったら、故郷に帰って結婚するんだ」的な展開。幸せな二人の間にひとりの女が・・というお約束の三角関係。放射能に汚染された危険地帯の中にある森と湖、ジャックのお気に入りの隠れ場所。砂漠の広がる世界の中のまさにオアシス。地下に隠れ住む人々、捻じ曲げられた真実、もうひとりの自分。様々な名作のコラージュというか、オマージュというか。物足りないといえば物足りないのだが、トンデモ的な荒唐無稽さに陥る前に品良く寸止めしている。

トムは走ればイーサン走りだし、空中戦は「トップ・ガン」ですがw
説明不足という意見もあるが、これはアメリカ映画だ。かの国の住人なら、摩天楼の古びた望遠鏡や猿の人形、スタジアムの残骸などを見れば、そこがニューヨークだとただちに理解出来るだろう。そんな世界に、レイバンのサングラスに、色褪せたニューヨークヤンキースの帽子をかぶった、少し昔の典型的アメリカンな風貌のトム・クルーズが似合う。彼だからこそ成立している映画なのだと良く解る。

ワイエスの代表作「クリスティーナの世界」
ラスト近くにクローズアップされる絵。あまりにも有名な絵。歩けないクリスティーナにとって、そこから見える世界だけが彼女の世界のすべて。偽りの人生に閉じ込められていた自分達もそれと同じだと。だがクリスティーナは毅然と顔を上げている。確かに彼女の世界は狭いかも知れないが、もっと広い世界がある事を彼女は知っていた。
彼らもまた、今の世界の向こうにある真実を感じ始めていた。
モーガン・フリーマン、彼ほどの役者がこんなチョイ役で終わるはずはないだろうと思ったら・・やはり見せ場がありましたね(ノ∀`)
Oblivion
監督 ジョセフ・コシンスキー
脚本 ジョセフ・コシンスキー カール・ガイダシェク マイケル・アーント
原作 ジョセフ・コシンスキー アーヴィッド・ネルソン
ジャック・ハーパー トム・クルーズ
マルコム・ビーチ モーガン・フリーマン
ジュリア・ルサコヴァ オルガ・キュリレンコ
ヴィクトリア・オルセン アンドレア・ライズボロー
サイクス ニコライ・コスター=ワルドー
サリー メリッサ・レオ
鑑賞後、近所の席の女子二人の会話
「トム・クルーズ、若いねー!」
「だってあれ、クローンだもん」
・・・・・・・・・・・・・・・え?(´・ω・`)



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