名探偵ポワロ カーテン~ポワロ最後の事件~ Curtain: Poirot’s Last Case 感想

名探偵ポワロ 

ショパンの「雨だれ」が流れる
ポワロの元へ向かうヘイスティングス

公式HPよりあらすじ
ポワロは親友ヘイスティングス大尉をスタイルズ荘に呼び出す。ここは、かつて二人が初めて一緒に解決した殺人事件の舞台になった屋敷だが、現在はゲストハウスになっている。ヘイスティングスは再会したポワロのやつれた車椅子姿に驚く。ポワロは「ここが再び殺人現場になるが標的は不明だ」とヘイスティングスに告げ、屋敷に潜む殺人犯を捕えるパートナーとして、動けない自分の代わりに情報収集をしてほしいと頼む。


最後の事件が幕を開ける。舞台はスタイルズ荘。ポワロとヘイスティングスの物語の始まりの場所。何と心憎い設定。屋敷を買い取ったラトレル夫妻がホテルとして運営していた。ヘイスティングスをデイジー・ラトレルが迎える。やり手の夫人、ラトレル氏は尻に敷かれている。

血を見るのが嫌いなバードウォッチングが好きなスティーヴン・ノートン、横柄なウィリアム・ボイド・キャリントン卿、ヘイスティングスの娘のジュディスも滞在している。彼女はジョン・フランクリン博士の動物実験の手伝いをしている。ピアノを弾くエリザベス・コール、長年の従僕ジョージに代わってポワロに付き添うカーティス。フランクリンの妻で我侭なバーバラ、看護婦のクレイブン。ヘイスティングスを「ポワロのしもべ」と見下すアラートン。様々な事件の関係者がここにいる。いつものクリスティーの道具立て。

二人の再会、車椅子の老いたポワロが痛々しい
その姿に胸を衝かれるヘイスティングス


ポワロがスタイルズ荘に来たのは、ヘイスティングスの娘が滞在していると知って不仲の父と娘の再会を目論むためだというが、ポワロを良く知っているヘイスティングスは、それだけではないと思う。ポワロはここでまもなく起きる殺人事件を阻止するために、ヘイスティングスに手伝って欲しいと頼む。

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ヘイスティングスが現場を飛び回り証拠を集める
風邪で動けないポワロがベッドで灰色の脳細胞で推理


かつても同じように事件を解決した二人。(ほら、昔みたいに)そう言いたげに”モナミ”に微笑むポワロ。おそらくこれが最後と知る笑顔。ヘイスティングスも何処かでそれを感じている。もし事件が解決して幕が下りても、カーテンコールはないであろう事を。

ヒュー・フレイザーの正装姿、ポワロが評したように「背筋が伸びている」。老いても昔のスマートさを失っていないのがうれしい。

娘ジュディスは殺人を肯定する冷たい人間になっていた。誰かに感化されたとポワロはいう。言い争う父と娘。薬物中毒のアラートンと仲が良いのが気に食わないヘイスティングス。(ここはクリスティーが自分の作った人物をいかに上手く使ったかの好例)「役立たずは殺せ」と晩餐会でも言い切るシュディス。愕然とするヘイスティングス。

聞いた事を報告しないヘイスティングにポワロにしては厳しい言葉。

直筆サイン入り写真★デヴィッド・スーシエ/海外ドラマ『名探偵ポワロ』

「毒が回る、それを食い止めねば」

内容を知っているからだろうが、犯人は実に巧妙に毒を撒く。それを上手くドラマに作り上げている。自由のきかない身体に苛立つポワロ。ポワロは今までにない凄惨な顔で凄絶な言葉を吐く。限られた命はあと少し、犯人がそこにいると知っているのに、追い詰められない苛立ちが彼を支配している。ヘイスティングスが思っている以上に。

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隙間風、ココア・・ポワロ好きなら、にやりとする

事件は起きた。バーバラ夫人が死んだ。表向きは自殺、だがポワロは殺人だとヘイスティングスに言う。人々はスタイルズ荘を離れる算段をし始める。嵐の夜、ポワロはノートンを呼び寄せる。寝付けないヘイスティングス。朝になりポワロを尋ねるとかなり様子が悪い。フランクリンが宣言したように死期が近い。ポワロは証拠の入った鞄の鍵をヘイスティングスに託すポワロ。

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エリザベスの弾く「雨だれ」

神への許しを乞いながら、ポワロは・・・何かを感じて、ポワロの部屋へ引き返すヘイスティングス。最愛の友はこの世から旅立っていた。ジュディスは傷心の父に心無い言葉を浴びせ、フランクリンの妻となるべく彼と共にアフリカへ旅立つと宣言する。託された鞄の中のメモ、ジョージに会いに行くように指示されている。ジョージがやめた理由は嘘だった。ポワロにはジョージがいては困る理由があった。英国の召使らしく多くは語らないジョージ。この物語の本当の姿が見えて来る、最初のサイン。

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ポワロの死から4ヶ月

ポワロの弁護士から送られて来た書類。ヘイスティングスは真実を知る。ポワロの追っていたのはノートン。人生の最後に出会った完璧に近い殺人犯、ポワロは彼を許せなかった。彼がこれからも多くの人を不幸にすると知りながら野放しにしておく事が出来なかった。心理的殺人教唆、気弱そうな外見を利用して取り入り、巧みに人の心を操り、殺意を芽生えさせる。決して捕まらない殺人犯。ヘイスティングスも罠に落ちた。だがポワロが未然に防いだ。

あの夜、ポワロはノートンに自分の知っているすべてを話した。ノートンの悪意を見抜いたと。ノートンは勝ち誇り、病身のポワロをあざ笑った。誰も自分を罰せないと。だがその態度がポワロに最後の決意をさせた。ノートンの悪意の最後の犠牲者は自分自身。

処刑・・すべての名声を犠牲にしても、未来の殺人を阻止したかった。

重い真実が残された。ヘイスティングスは遺言通りにエリザベス・コールに真実を告げる。父を殺したのが姉ではなくノートンだと。ノートンが姉の心に殺意を芽生えさせたのだと。

ラスト・・ポワロの部屋に戻ったヘイスティングスに時間が戻る。寝台の上には事切れたポワロの姿。すべてが終わった。回想の中のポワロ、ヘイスティングスへの手紙を書き終え、署名する。ポワロの笑顔のアップ。灰色の脳細胞が存分に活躍した後の、あの満足そうな笑顔。

暗転、テロップが流れ始める。
嗚呼、終わってしまった。

カーテン (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

「カーテン」を初めて読んだ時の衝撃が忘れられない。作者の手でこんなにも丁重に埋葬されてしまったポワロ。ポワロ亡き後、ポワロの霊に導かれるように奔走するヘイスティングス、そして恐ろしい犯人の正体、明らかになる死を前にしたポワロが行った或る行為。厳格に自身に課した規律を守るポワロが苦渋の選択をせねばならなかった苦悩。

ドラマ制作開始から25年の歳月が流れ、それは役者の上にも流れ、年老いたポワロや長年連れ添った妻を失ったヘイスティングスを演じるにふさわしくなったのは、天の良き采配であったかも知れない。

完走したデヴィッド・スーシェと制作陣に最大の拍手を、そして心からの感謝を!!

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Agatha Christie's Poirot

原作:アガサ・クリスティー
製作:ブライアン・イーストマン他
製作総指揮:ニック・エリオット他
脚本:クライブ・エクストン、マイケル・ベイガー、アンソニー・ホロウィッツ他
監督:エドワード・ベネット、レニー・ライ他
音楽:クリストファー・ガニング
制作:カーニバル・フィルム、英LWT、グラナダ・プロダクション、米A&Eテレビジョンネットワーク、アガサクリスティーLtd.

エルキュール・ポワロ:デヴィッド・スーシェ 熊倉一雄
アーサー・ヘイスティングス大尉:ヒュー・フレイザー 富山敬→安原義人
ジェームス・ハロルド・ジャップ警部:フィリップ・ジャクソン 坂口芳貞
ミス・レモン:ポーリーン・モラン 翠準子
アリアドニ・オリヴァ夫人:ゾーイ・ワナメイカー 藤波京子→山本陽子

ジュディス・ヘイスティングス:アリス・オル=ユーイング 安藤麻吹
ジョン・フランクリン:ショーン・ディングウォール 世古陽丸
バーバラ・フランクリン:アンナ・マデリー 勝生真沙子
スティーブン・ノートン:エイダン・マカードル 渡辺穣
ウィリアム・ボイド・キャリントン卿:フィリップ・グレニスター 田中正彦
エリザベス・コール:ヘレン・バクセンデイル 泉晶子
トービー・ラトレル:ション・スタンディング 佐々木敏
デイジー・ラトレル:アン・リード 山本与志恵
アラートン少佐:マシュー・マクナルティー 高橋広樹


87歳のご高齢にもかかわらず、熊倉一雄さんが最後までポワロを演じて下さったのもうれしかったです。私にはポワロは熊倉さんですよ!ミス・レモンの翠準子さん、ジャップ警部の坂口芳貞さんも最後のシリーズでも参加された事もうれしく・・ヘイスティングス大尉は富山敬さんから安原義人さんへ。若さゆえの素朴さでポワロに翻弄されて当惑しつつも、機械や車などの得意分野う生かし、年上の友人に尽くす”モナミ”。どうしても最初の印象が強く残るために富山さんの声を思い出してしまうのですが、富山敬さんの真面目さと美人に弱いユーモラスな面の混在した軽妙で緩急のあるヘイスティングス、安原義人さんの元軍人の英国紳士らしさを感じさせるヘイスティングス、共に好きでした。

声優の皆様と吹き替えのスタッフにも沢山の感謝を!!

書きたい事が沢山ありすぎて・・それはまたあらためて。

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