映画「X-MEN:アポカリプス」感想

三部作を貫くのはエリックの心の傷み。それはミュータントすべてが多かれ少なかれ抱くものだが、彼はその並外れた力故に、人間の冷酷さと同時に愛を持つ理不尽さに、あまりにも過酷に出会い過ぎてしまったから。
時代は1980年代。
チャールズは学園を理想郷にしようとし、エリックは身を隠している。レイヴンは虐待を受けているミュータントを密かに救っている。
ぶっちゃけ、アポカリプスがあまりにも小者過ぎてがっかり。超越者ならもっと別の視点で世界や星を見ても良いと思うのですが。カリスマ性がなさすぎる。単なる時代遅れの我儘な爺さんにしか見えない。他者を敬服させるような崇高な哲学や理想も感じられない。だから部下に見限られてしまうのも納得。
若き日のストーム(当然ハル・ベリーではない)、サイクロプスと彼の兄ハボックも登場する。サイロックのヴィジュアルがいい。コミックスのイメージを再現していると思う。ナイトクローラーも可愛い。悪魔と呼ばれてしまう恐ろし気な姿に信心深さと繊細さを併せ持つのがいい。エンジェルはあの頭のてっぺんにソフトクリームを乗せたような髪型がちょっと(^^;ストームもそうなので、あれはアポカリプスの趣味なのでしょうかね?w
元祖「X-MEN」映画の時は、やたらに威張り腐ってリーダーぶってるだけのつまらない男で、あっさりと敵の策略に引っかかって死んでしまうだけのサイクロプスでしたが、今回は出来の良い兄アレックス(胸と手から光線を出す。毎回服に穴を開けて台無しにしてしまうのはどうかと思うけれど、光線を制御出来るだけ、出っ放しのスコットよりも有能)の死から、兄のように世界の役に立とうと成長する良いエピソードが与えられていました。ジーンは女優さんに違和感が。どうしてもジーンに思えない。
前作と同様、クイックシルバーがいい。
彼の能力を発揮するシーンはコミカルでスタイリッシュで楽しい!!マグニートーの息子だけれど、彼はマグニートーにそれを告げられなかった。もし告げたとしても、妻と娘を失い絶望の中にいるマグニートーがどう思うかはわからないけれど。それにしてもエリック、モテるのね。他にも隠し子がいそうですよwマイケル・ファスベンダー素敵です。
「X-MEN: ファースト・ジェネレーション」「X-MEN: フューチャー&パスト」「X-MEN:アポカリプス」の三部作で、若き日の教授とマグニートー、そしてX-MENの成立までが描かれたわけだけれど、以前の映画「X-MEN」とはパラレルワールド的な扱いとなって(前作で過去を変えた事で未来も変化というw)、従来の「X-MEN」キャラの設定や彼らの生い立ちや出会い等がかなり改変されているけれど・・・・
私的には大満足!!
「ファースト・ジェネレーション」こそ、こんなやさぐれて目付きの悪い若者が後年の穏やかな教授(パトリック・スチュワート万歳!)になるのだろうかと違和感が大きかったけれど、それを「フューチャー&パスト」で辻褄合わせというか、ファンに納得出来る形で落とし込んで来たのが良かった。「アポカリプス」では、更に「X-MEN」の成立と教授がハゲになった理由が語られます。遺伝ではありません、とある強烈な出来事のせいなのです。あのはらはらと髪が落ちていくシーンは衝撃的。頭を使いすぎると髪に良くないというのは本当らしい(オイw
チャールズとエリック・・何故、二人が未来に敵対するようになってしまうのか。
チャールズは共存を理想とし、エリックは共存は無理だと主張する。そこは、裕福な家で育ったチャールズとアウシュヴィッツで過酷な目に合ったエリックとの、人間の善意を信じるチャールズと人間がどこまでも残酷になれる事実を体感したエリックとの根本的な違いに追う所が大きい。
本当に心優しいのはエリックの方。
だからこそ、彼は同胞のための戦いの先陣に立ち、正体がバレたらどうなる解ってるのに、危険な目にあった人間を咄嗟に助けてしまう。彼の優しさは彼の並外れた能力ゆえに悲劇に繋がってしまうのだ。根っからの悪党なのではない。もしそうなら、彼はさっさと「恵まれし子らの学園」を強襲して叩き潰してしまっただろうし。
むしろ理想主義のチャールズの方がある意味冷淡で、集めて来たミュータントを「安全のため」にCIAの隔離部屋に監禁同然にし、CIAの心無いエージェントの嘲笑の中に置いてしまっても気が付かない。人の心が読めるのに、肝心な所には鈍感なのだ。そのあたりは、ハンクことビーストがチャールズの良き理解者として補佐役になってはいるけれど。
ミスティークことレイヴンの描き方もいい。
チャールズに拾われ、エリックと出会い、人間とミュータントの関係の是非で揺れていく。兄弟同然の3人を中心にミュータントと人間の葛藤が描かれていく。静かに暮らしたいと望んでも、人間はミュータントを畏怖し憎悪する。金儲けの道具として兵器として利用する人間達もいる。人間でないミュータントには”人権”はないと言わんばかりに。世界を救ってもそれを変える事は出来ない。差別と迫害は広がっていく。それでもチャールズは理想を追い、エリックは絶望を深めていく。その二人の間で、勝手に作られた英雄という偶像を嫌い、レイヴンは己の生きるべき道を探し続ける。そして来るべき時のために「X-MEN」の一員となる。
すべてが終わった後、モイラの記憶を戻すチャールズ。恋人同士だった頃の二人の時間が戻って来る。でも私たちはこの後に来るはずの彼らの運命を知っているわけで・・けれども、ほんの少し希望があるエンドでいい、戦士にだって休息は必要だ。それがどんなにつかの間の時間であっても。
ウェポンXとしてウルヴァリンもチラっと登場。憎々し気なストライカーも。ローガンを見て、MGSのスネークを思い出しました。あまりはっきり映らなかったけれど、痩せ気味のウルヴァリン?
お約束のスタン・リーは世界の崩壊に怯える老夫妻でした!!
エンドロールの後にも映像あり。何処かの機関の偉そうな人がウェポンXの血液サンプルを持ち去る。この続きは何時になるのかな?
X-Men: Apocalypse
STAFF
監督 ブライアン・シンガー
脚本 サイモン・キンバーグ
製作 ブライアン・シンガー ローレン・シュラー・ドナー サイモン・キンバーグ ハッチ・パーカー 製作総指揮 スタン・リー トッド・ハロウェル ジョシュ・マクラグレン
音楽 ジョン・オットマン
撮影 ニュートン・トーマス・サイジェル
配給 20世紀フォックス
CAST
チャールズ・エグゼビア / プロフェッサーX ジェームズ・マカヴォイ(内田夕夜)
エリック・レーンシャー / マグニートー マイケル・ファスベンダー(三木眞一郎)
レイヴン・ダークホルム / ミスティーク ジェニファー・ローレンス(牛田裕子)
エン・サバー・ヌール / アポカリプス オスカー・アイザック(松平健)
ハンク・マッコイ / ビースト ニコラス・ホルト(浅沼晋太郎)
モイラ・マクタガート ローズ・バーン(桑島法子)
ピーター・マキシモフ / クイックシルバー エヴァン・ピーターズ(吉野裕行)
ジーン・グレイ ソフィー・ターナー(能登麻美子)
スコット・サマーズ / サイクロップス タイ・シェリダン(木村良平)
アレックス・サマーズ / ハボック ルーカス・ティル(鶴岡聡)
カート・ワグナー / ナイトクローラー コディ・スミット=マクフィー(内山昴輝)
オロロ・マンロー / ストーム アレクサンドラ・シップ(志田有彩)
サイロック オリヴィア・マン(東條加那子)
エンジェル ベン・ハーディ(濱野大輝)
ウィリアム・ストライカー ジョシュ・ヘルマン(高橋広樹)
ジュビリー ラナ・コンドル (下山田綾華)
キャリバン トーマス・レマルキス
ローガン / ウェポンX - ヒュー・ジャックマン
吹き替えはアニメ声優が多い印象。マーベルだしこの内容には良いかも。何となく納得出来る配役。

fc2が不調の際はお手数ですがTB用ミラーブログをご利用下さい
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- 2016.08.16 (Tue) 23:39 | 気ままな映画生活 -適当なコメントですが、よければどうぞ!-
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- 2016.08.17 (Wed) 06:19 | 日々“是”精進! ver.F
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