映画「追憶」感想

追憶

スクリーンに切り取られた世界は儚くも美しい。

豪奢で華美という意味ではない。現実に寄り添って作られた映像。大抵の邦画の薄っぺらい画面とは違う。ゴミも埃もあっていいのだ、その世界を描くのに必要なら。泥が作られた泥ではなくあめつちで作られた泥に思えるほどに自然。巧みに作られた日常が物語に真実味を与える。

これは人生の深みを知った人ほど感じるものが多い映画。

人生経験が浅い人間には理解出来ない事が多いようだ。さりげなく主人公や周囲の背景を知らせる符号は沢山ある。小道具、台詞の端々にも。なのに「脚本が悪くてわからない」等と言うのは、あれだ、福井晴敏の言う所の「お粥にしないと食べられない」というやつだろう。そこにある情報を自分でかみ砕く事が出来ず、お粥にして口元まで運んでもらって、初めて味わえるという。彼らも何年かして見返したら、また違う感想を持てるかも知れない。

辛い話だ。人間の屑が多くの人を不幸にする話。

降旗康男監督は、その手の人間を描くのが上手い。とことんダメな人間の厭らしさがにじみ出て来る。それと同時に人間の持つ優しさや美徳を描くのも達者だ。救いようのない人間もいるが、救われていい人間もいるのだ。

この物語も、救いのある最後で終わる。

誰もが最大限に救われて笑顔で終わるのではない。真昼の明るさが似合うのではなく、沈みかけた夕陽が似合うような。明日は過酷かも知れないが、今はただ夕陽を眺めて、今日という日が安らぎの中に終わるのを受け止めていればいい、そんな映画。

お涙ちょうだいに流れすぎず、まとめているのがいい。

追憶 (小学館文庫)


STAFF
監督 降旗康男
脚本 青島武 瀧本智行
原案 青島武 瀧本智行
製作 伊藤伴雄 上田太地 臼井真之介
音楽 千住明
撮影 木村大作 坂上宗義
編集 板垣恵一
制作会社 東宝映画 ディグ&フェローズ
製作会社 映画「追憶」製作委員会
配給 東宝

CAST
四方篤 岡田准一 富山県警の刑事
田所啓太 小栗旬 事件の容疑者。
川端悟 柄本佑 事件の被害者 倒産寸前のガラス会社を支える
四方美那子 長澤まさみ 篤の妻 流産を機に夫と別居している
田所真理 木村文乃 啓太の妻 出産を控えている
川端小夜子 西田尚美 悟の妻
仁科涼子 安藤サクラ
山形光男 吉岡秀隆


ゴリ押しだらけのジャニタレの中では、良くここまでになった感のある岡田准一。「永遠の0」の頃はまだ「なんだかな」という感じだったのに。むしろ小栗旬の方が役に合っておらず浮いていた。人脈で生き残るタイプか。柄本佑はこういう無意識の狡さも持つ情けない役が似合う。

脇を固める役者陣に達者な人が多いのもいい。邦画に良くある妙なパンダがいないのがいい。作品の質を下げるだけで、観客にはいい事がひとつもない存在。


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2017.05.11 (Thu) 12:43 | 気ままな映画生活 -適当なコメントですが、よければどうぞ!-