fc2ブログ

映画「ダンケルク[IMAX2D・字幕]」感想

☆もるがん☆

ダンケルク

空中戦が素晴らしい。

あえてヒーローは作らない。
作らないがささやかな望みは叶えられる。

台詞で解説しない。映像で語る。
IMAXのスクリーンの隅々までノーランの意思が行き渡る。

戦争の中で人は単なる物となり、政府の命令に決断を迫られる将校は、冷たい方程式に従いつつも、良心と抗う道を見つけようとする。自国民が先、だが共に戦った者達も救いたいというエクスキューズも含めて。

生き残りたいという共通の決意と無言の友情で結ばれた若き兵士達、戦争で息子を失っても誇り高き英国魂を忘れない老人、圧倒的に不利な戦場を駆け巡る空軍のパイロット、その肩に40万の兵士の命がかかる司令官。それぞれが体験するダンケルク。

映画 ダンケルク ポスター 42x30cm DUNKIRK 2017 クリストファー ノーラン トム ハーディ ケネス ブラナー キリアンマーフィ ハリー スタイルズ

船に乗りたくて担架を運ぶふりをしたり、桟橋の下に隠れたり。とっさの判断が生死を分ける。生き残る事を誰かを蹴落とす事で達成する描き方はしない。手を差し伸べる事で、命を繋ぐ意味を問いかける。本当に手を取り合うとはどういう事か、その掌の熱さまで伝わりそうな場面が多い。

パイロットは帰還を諦め、燃料が尽きるまでダンケルクの海岸を守り抜く。プロペラの止まった機体を操り、海岸に着陸させ、火を放つ。敵に奪われないように。パイロットは捕虜になる。

PTSD(当時はそんな言葉はなかったろうが)に陥った兵士を閉じ込めてパニックを起こさせた事が、友人の死の原因になってしまう船長の息子。当の兵士は何度も怪我をさせた青年の様子を尋ねる。その肩を優しく叩く老船長。戦争に壊された心。弾の打ち合いだけが戦争ではない。有形無形にその影響は広がっていくのだ。変えられてしまった沢山の人生、その苦さと悲哀が映画の最後に捧げられた言葉に託されている。

戦争映画が苦手な人でも、これは見て欲しい。
戦争を描いているのではないから。


逃げ回って故郷(Home)にたどり着いた青年が、ねぎらう老人に「生き延びただけだ」と自嘲すると、老人は「それでいいんだ」というような事をいう。故郷の白い壁(アルビオン)、温かい紅茶、そう、その紅茶が英国らしさを醸し出す。船の上でも紅茶、陸でも紅茶。そしてジャム付きのパン。

大局と対局の個々を描く事で、歴史とは無数の人生の積み重ねだと教えてくれる。いや、無数の命と言うべきか。戦争の善悪は勝つか負けるかで決まるが、人の善悪は簡単に割り切れるものではない。同じ出来事でも、心のさじ加減ひとつで、報われない事もあれば救われる事もあるのだ。

スピットファイアの空中戦を見て「スカイ・クロラ」を思い出した。

沈黙の中で行われる戦闘だからだろうか。壊れた計器を見る、海面の船の位置を把握する、レーダーなぞない目視の世界で、パイロットは瞬時に行動を選択する。そういう所だろうか。邦画やアニメだとパイロットのひとりごとのような台詞が延々と入るのがありがちなだけに。その間にアイドルや萌えキャラが切迫した風のキンキン声を発する場面を挟んだり。それはそれで盛り上がるとして。そういう手法や文法ではない描き方。

あえて劇的な盛り上がりは作らない。
なのに、この緊迫感。

ノーラン・・恐ろしい子。

映画 ダンケルク ポスター 42x30cm DUNKIRK 2017 クリストファー ノーラン トム ハーディ ケネス ブラナー キリアンマーフィ ハリー スタイルズ

Dunkirk

STAFF
監督 クリストファー・ノーラン
脚本 クリストファー・ノーラン
製作 エマ・トーマス クリストファー・ノーラン
製作総指揮 ジェイク・マイヤーズ グレッグ・シルバーマン
音楽 ハンス・ジマー
撮影 ホイテ・ヴァン・ホイテマ
編集 リー・スミス
製作会社 シンコピー・フィルムズ
配給 ワーナー・ブラザース
上映時間 106分

CAST
トミー フィン・ホワイトヘッド 英国陸軍二等兵
ギブソン アナイリン・バーナード トミーと行動を共にする無口な兵士
アレックス ハリー・スタイルズ 英国陸軍「高地連隊(ハイランダー)」の二等兵
ミスター・ドーソン マーク・ライランス 小型船の船長。ピーターの父親
ピーター トム・グリン=カーニー ミスター・ドーソンの息子
ジョージ バリー・コーガン ミスター・ドーソンに同行する青年
コリンズ ジャック・ロウデン 英国空軍スピットファイアのパイロット
ファリア トム・ハーディ 英国空軍スピットファイアのパイロット 最後の一機
ウィナント陸軍大佐 ジェームズ・ダーシー
ボルトン海軍中佐 ケネス・ブラナー
震える兵士 キリアン・マーフィー ミスター・ドーソンが救出した英国兵士
ラジオの声 マイケル・ケイン


サー・マイケル・ケイン、ブルース・ウェインの忠実な執事アルフレッドではないですか。ノーラン作品で良く見る方。ケネス・ブラナーは将校の風格はさすが。

ハンス・ジマーの音楽もいい。
あのちょっとジョン・カーペンターを思い出すキュイーンという音も恐怖を煽る。

陸は1週間、海は1日、空は1時間。その時系列を上手く構成してある。

チャーチルは3万人と言ったのに、本当は40万人、本土決戦にそなえて軍は極力動かさない方針の中で、民間の協力を得て33万人を救出。チャーチルは自分の手柄のように演説したようで。Nener surrender.とか Never, Never, Never Quit. とか言っていたのかしらん。

赤十字マークが描かれていようと、容赦なく撃沈させる。それが戦争だよね。

久しぶりに凄い映画見たわ~


ブログランキング・にほんブログ村へ
fc2が不調の際はお手数ですがTB用ミラーブログをご利用下さい

Comments 0

There are no comments yet.

Leave a reply

Trackbacks 5

Click to send a trackback(FC2 User)
この記事へのトラックバック
  •  『ダンケルク』 2017年8月23日 丸ノ内ピカデリー 
  • 『ダンケルク』 を試写会で鑑賞しました。 上映前にクリストファー・ノーラン監督と山崎貴監督が登壇して山崎監督に ノーラン監督が教えてました。おかげで山崎監督の今後が楽しみになりました 【ストーリー】  1940年、連合軍の兵士40万人が、ドイツ軍によってドーバー海峡に面したフランス北端の港町ダンケルクに追い詰められる。ドイツ軍の猛攻にさらされる中、トミー(フィオン・ホワイトヘッド)ら若い...
  • 2017.09.11 (Mon) 08:29 | 気ままな映画生活 -適当なコメントですが、よければどうぞ!-
この記事へのトラックバック
この記事へのトラックバック
この記事へのトラックバック
  •  劇場鑑賞「ダンケルク」
  • 絶対、生き残る… 詳細レビューはφ(.. ) https://plaza.rakuten.co.jp/brook0316/diary/201709090000/ 【輸入盤】ダンケルク [ ダンケルク ]
  • 2017.09.11 (Mon) 12:49 | 日々“是”精進! ver.F
この記事へのトラックバック
  •  「ダンケルク」☆ダンケルクスピリット
  • ハンパない臨場感で、泳げない私は観ている間に何度溺れ死んだことか・・・ ただの歴史もの的戦争映画ではなく、ひとりのヒーローを描く歴史エンターテインメントでもない。 多くの一般の人たちが自らの命の危険も顧みず救助に貢献する姿に、思わず温かい涙が目に滲むのだ。 (ラストに言及しています)
  • 2017.09.13 (Wed) 00:41 | ノルウェー暮らし・イン・原宿