
SF好きにはたまらない映像。
圧倒的な個性で多大なる影響を与えた作品の続編。
前作を超える事を義務付けられている映画。
人造人間に魂はあるのか?難しい質問だ。
人間にすらあるかどうかわからないのに。
1982年に想像された2019年のLAはオリエンタルなディストピアであった。日本人はスクリーンの中に見慣れた文字や和食らしきもの、ハリソン・フォードが箸を持つ姿に驚愕した。未来=洗練された西洋文化ではなく、東洋風味の退廃的な世界が描かれたこの映画への衝撃は大きかった。それ以後、リスペクト、オマージュ、パクリそれらの派生がクリエーターによって生み出されて来た。
逆にアンドロイド=ロボットとすれば、Kはロボット刑事のパクリにも思える。模倣は創造の基本だという。ながら相互に影響を与え合ったとしてもそれは正しい道筋なのかも知れない。
騒然とした汚れた世界。人間もレプリカントも同居している。だが”解任”という名のレプリカントの処刑は行われている。それを普通の人間がどう思っているのは分からない。レプリカントを殺すのも新型のレプリカントなのだ。
人間に反抗する旧型、人間に従順な新型。
ウォレスはそう思っているが、新型にも嘘がつける者がいる。最初から計画は狂っている。レプリカントという無抵抗な奴隷の上に成立する理想の世界の。人間とレプリカントの最大の違い、生殖の可否が両者の壁を崩していくというが。これも生まれた子供が異常であり、閉鎖された空間でしか生きられないなら、生殖可能と言えるのか疑問だ。何よりもレプリカント同士の子ではない。人間もレプリカントも不確かなものを抱えているのに、それを武器に戦おうとする・・という前振りで終わる。
懐古だけならつまらない、その先がないと?
これは起承転結やストーリーよりも、人間とレプリカント両者が共存する世界を楽しむ映画。スターウォーズでもマーベルでもない、SFの要素を純粋培養した世界の先、どんなに膨大な数の映画があろうとも、このような映像は希少なのだ。灰色の影、揺れる水、まなざしはいつも不安に満ち、世界は静かに崩壊してゆく。
傑作だの駄作だの、そんなレッテルは関係ない。
あの世界の続きを見ている、その快感だけでいい。
白い鳩を手放し、時を止めたルトガー・ハウアーのレプリカントを思わせるラスト。降りしきる雨は雪に姿を変え、人よりも過酷な運命を背負ってしまったレプリカントに優しく積もりゆく。特別だと思っていたのに、特別ではなかった自分、ありふれた一人でしかない自分。人はいつも己を誤魔化す為に必死で言い聞かせるのだ、どんな人間にも価値はあると。だが嘘をつけないレプリカントは、事実を受けとめるしかない。階段に横たわり、灰色の空を見上げた彼の中に、どんな想いがあったのだろう。
Blade Runner 2049
STAFF
監督 ドゥニ・ヴィルヌーヴ
脚本 ハンプトン・ファンチャー マイケル・グリーン
原案 ハンプトン・ファンチャー
原作 フィリップ・K・ディック『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』
製作 アンドリュー・A・コソーヴ他
製作総指揮 リドリー・スコット他
音楽 ハンス・ジマー ベンジャミン・ウォルフィッシュ
撮影 ロジャー・ディーキンス
編集 ジョー・ウォーカー
製作会社 アルコン・エンターテインメント他
配給 ワーナー・ブラザース ソニー・ピクチャーズ
CAST
K - ライアン・ゴズリング(加瀬康之)
リック・デッカード - ハリソン・フォード(磯部勉)
ジョイ- アナ・デ・アルマス(小林沙苗)
ラヴ - シルヴィア・フークス(志田有彩)
ジョシ警部補(マダム) - ロビン・ライト(深見梨加)
マリエット - マッケンジー・デイヴィス(行成とあ)
アナ・ステリン博士 - カーラ・ジュリ((恒松あゆみ)
ミスター・コットン - レニー・ジェームズ(辻親八)
サッパー・モートン - デイヴ・バウティスタ(木村雅史)
ネアンダル・ウォレス - ジャレッド・レト(桐本拓哉)
ココ - デヴィッド・ダストマルチャン(上田燿司)
ドク・バジャー - バーカッド・アブディ
フレイザ - ヒアム・アッバス(藤生聖子)
ナンデス - ウッド・ハリス(白熊寛嗣)
ファイル係 - トーマス・レマルキス(中村章吾)
レイチェル- ローレン・ペタ(ベースモデル)、ショーン・ヤング(アーカイバル・フッテージ)(岡寛恵)
ガフ - エドワード・ジェームズ・オルモス(佳月大人)
メタルギアの小島監督が褒めていたが、好みなのが良くわかる。ジョイだのラヴだの、淡々と任務をこなす男、彼の背負った運命の皮肉。
後から思ったのだけれど、綺麗すぎるのだよね、どのシーンも。スクリーンの中が綺麗過ぎる。これは最近のどの映画にも言えるけれど。元の「ブレードランナー」の濃密さがないのだよね。それと強烈な個性を持つキャラクターがいない、ロイのような。
All those ... moments will be lost in time, like tears...in rain. Time to die....
すべては時の中に消え去ってしまう。雨の中の涙のように。俺の死ぬ時が来た・・・
彼の最期の言葉に、レプリカントの運命の過酷さと彼らの願いが込められていて。続編に何か欠けているとしたら、それは凝縮された何か、思いなのか願いなのか後悔なのか、良くわからないけれど、もっと深く激しい情熱なのか。ロイの慟哭が彼らには感じられない。

帰りに小籠包を食べた。少し横道に入ったあたりの香港や台湾で感じた喧騒を思い出したからかも知れない。

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