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映画「北の桜守」感想

☆もるがん☆

北の桜守

老いた先にある忘却は、神様の数少ない優しさのひとつなのかも知れない。

吉永小百合の唯一無二の存在感が作り出す映画。

彼女のためになら、この衰退しきった邦画も最後の力を振り絞って応えようとするかに思える。彼女がその身を捧げた世界がたとえ汚れきってしまったとしても、彼女だけは無垢な光に包まれたままでそこにいるようだ。それは彼女自身の努力のたまもの、その彼女に魅せられずにいられなかった人々の想いのなしえたもの。常に彼女が訴えて来た、戦争や国に犠牲を強いられた市井の人々への思いが今回の映画にも色濃い。

そして彼女の語りを生かし、物語の背景を見せるのに舞台という手法は実に効果的。何処かでの見たような演出だと思ったら、やはりケラリーノ・サンドロヴィッチ。これは映画的にも良い方法。CGやらセットやら余計な芝居やらを全部そぎ落とし、映画の世界の中心に観客の気持ちを据える事が出来る。それも吉永小百合の達悦した演技力があってこそ。

多くの幸福を粉砕し、多くの人々の身も心も銃弾で引き裂いた戦争。

樺太に咲いた桜はどうなったのだろうか。ソ連の攻撃で根こそぎやられてしまったかも知れない。桜は春ごとに何処かで咲いていただろうが、親子がふたたび幸福になって見上げるまで、彼女達にとっての本当の桜は存在しなかったのかも知れない。

認知症の家族を持つ身をしては、色々と考えさせられる映画ではあるけれど、それを重くではなく、深く描いた所は監督の手腕も大きい。東宝の悪い癖が沢山出ていたのに「陰陽師」二作は好きな映画のひとつ。

吉永小百合の息子として堺雅人なのもいい。

彼も独特な味を持つ俳優、二人の芝居がぶつかると面白い効果が生まれる。他が通常の邦画営業なので、二人がさらに印象的になっていく。堺雅人の個性が強いので、篠原涼子がほど良い。

おにぎり

コンビニ上陸のあたりは、セブンイレブンの歴史のように思えるけれど、てつさんのおにぎりが売っていたのはローソンだった。お店の雰囲気はローソンよりもむしろデイリーヤマザキ風だった。野間口徹の店長がとてもらしくて良かった。リアルにコンビニにいそうで。

本当に辛い体験をしたら、それを安易に口にはしないものだ。てつさんも修二郎も。そういう映画。



映画「北の桜守」オリジナルサウンドトラック

STAFF
監督 滝田洋二郎
脚本 那須真知子
舞台演出 ケラリーノ・サンドロヴィッチ
撮影監督 浜田毅
音楽 小椋佳、星勝、海田庄吾
主題歌 「花、闌の時」(作詞・作曲:小椋佳 編曲:星勝)
宣伝協力 宝酒造、ローソン
協賛 ANA
協力 稚内市、網走市、スターツコーポレーション、伊藤園、ニトリ、アイングループ
特別協力 JR東日本、JR北海道
配給 東映
製作プロダクション 東映東京撮影所
製作 「北の桜守」製作委員会

CAST
江蓮てつ 吉永小百合
江蓮修二郎 堺雅人
江蓮真理 篠原涼子
山岡和夫 岸部一徳
島田光江 高島礼子
三田医師 永島敏行
居酒屋たぬきの主人 笑福亭鶴瓶
岡部大吉 中村雅俊
杉本久 安田顕
木村学 野間口徹
岩木 毎熊克哉
江蓮徳次郎 阿部寛
菅原信治 佐藤浩市


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Posted by☆もるがん☆
映画

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