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映画「ファースト・マン[IMAX2D・字幕]」感想

☆もるがん☆

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どんな偉業も人ありき

それも多くの人々の。その中の一人、英雄と呼ばれた人の等身大の姿を描いた映画。

だからどんな偉業も偉業そのものには焦点を当てていないので、淡々とした印象になる。だが現実の人生で何か成し遂げてもファンファーレは鳴らないし劇的なBGMが流れるわけでもない。だからこちらの方がリアルなのだ。その分、人々の表情や言葉が浮き上がり、印象的になる。

多用されるアップが、その印象をさらに強調する。

安全性の意識も技術も希薄な時代、事故死する飛行士は少なくはなかった。同僚を友人を、不意に失う彼ら。そして妻ならば、偉業の達成より夫が無事で帰って来てくれた方がいいと思うのは、当然の事だろう。そんな葛藤も描かれる。仕事に夢中な夫に不満を持ちながらも、その身を案じるニールの妻ジャネットをクレア・フォイが好演。同僚は近所に住んでいる。妻同士の交流もある。事故で大黒柱を失った妻、明日は我が身と思う妻。

政治家の思惑に踊らされた計画であっても、従事する者には一生の仕事だ。政治家には単なる人気取りの手段のひとつに過ぎないとしても。保身で掌をころころ返す政治家とは違うのだ。


ファーストマン(上) (ニール・アームストロングの人生)

主人公のニールは一貫して仕事に忠実な人間として描かれる。有能だが家族よりも仕事を優先する。生身の人間のキャパシティには限界がある。難解なるプロジェクトに関わる身としては私生活に割く割合がどうしても少なくなるのだ。だが家族を愛していないわけではない。幼くして亡くなった娘カレンをずっと忘れずにいる。カレンの形見の腕輪を月面に置いて来たのはフィクションらしいが、ニールという人間を語るのに良いエピソード。

ニールのライアン・ゴズリングは「ラ・ラ・ランド」が記憶に新しいけれど「ブレードランナー 2049」のレプリカントも好き。運命を受け入れると切り開くの違いはあっても、時に下を見てもまた静かに顔を上げる姿がいい。

宇宙のシーンの明暗の強調やワルツや女性コーラスが2001風味なのも好み。

今にして思う、誰もが見上げる月に降り立った偉業の素晴らしさを。そしてその影に苦悩した人々の事を。観た後に実に多くの余韻を感じる映画。人類は何処へ行くのか、そして何処まで行こうとしているのか。

First Man: The Life of Neil Armstrong (English Edition)

First Man

STAFF
監督 デイミアン・チャゼル
脚本 ジョシュ・シンガー
原作 ジェームズ・R・ハンセン『ファーストマン: ニール・アームストロングの人生』
製作 ウィック・ゴッドフリー マーティ・ボーウェン アイザック・クラウスナー デイミアン・チャゼル
製作総指揮 スティーヴン・スピルバーグ アダム・メリムズ ジョシュ・シンガー
音楽 ジャスティン・ハーウィッツ
撮影 リヌス・サンドグレン
編集 トム・クロス
製作会社 ユニバーサル・ピクチャーズ アンブリン・エンターテインメント ドリームワークス・ピクチャーズ テンプル・ヒル・エンターテインメント ファンタズマ
配給 ユニバーサル・ピクチャーズ  東宝東和

CAST
ニール・アームストロング ライアン・ゴズリング
ジャネット・アームストロング クレア・フォイ
エド・ホワイト ジェイソン・クラーク
ディーク・スレイトン カイル・チャンドラー
バズ・オルドリン コリー・ストール
エリオット・シー パトリック・フュジット
デイヴ・スコット クリストファー・アボット
ボブ・ギルルース キーラン・ハインズ
パトリシア・ホワイト オリヴィア・ハミルトン
ジェームズ・ラヴェル パブロ・シュレイバー
ガス・グリソム シェー・ウィガム
マイケル・コリンズ ルーカス・ハース
ピート・コンラッド イーサン・エンブリー
ジョー・ウォーカー ブライアン・ダーシー・ジェームズ
ロジャー・チャフィー コーリー・マイケル・スミス
マリリン・シー クリス・スワンバーグ
チャック・イェーガー マシュー・グレイヴ


バズ・オルドリンは、実写版「宇宙兄弟」にご本人が本人役で出演したのも思い出深い。貴方は誰かと問う六太に「遠い昔、月を歩いた男さ」のように洒落た応対をする老紳士でした。

ニールがアポロ11号で流した音楽が「ドボルザーク」の新世界交響曲とサミュエル・ホフマンの「ルナ・ラプソディー」というのは実話だそうだけれど、いい話だ。

1960年代後半のアポロ計画の急ピッチぶりは凄いね。ケネディの公約だからだろうけれど。しかし当時の最先端の技術、確かPC-286相当と聞いた事があるけれど、それを思うと月まで行かれただけでも凄い。そして帰還するとは。はやぶさの帰還よりも奇蹟に近い出来事だったのかも知れないな。アメリカは絶対にそんな事は言わないだろうけれど。

白人を月に行かせるために黒人が搾取されている・・というのは良くあるアレですよね。差別は良くない事だけれど、この手の強引な理屈はどうかと思うわ。それも良くある手法ですが。

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Posted by☆もるがん☆
映画

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  •  劇場鑑賞「ファースト・マン」
  • 詳細レビューはφ(.. ) https://plaza.rakuten.co.jp/brook0316/diary/201902120000/ ファースト・マン オフィシャル・メイキング・ブック ビジュアル&スクリプトで読み解くデイミアン・チャゼルの世界 [ ジョシュ・シンガー ]
  • 2019.02.22 (Fri) 19:40 | 日々“是”精進! ver.F
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  •  『ファースト・マン』 2019年2月11日 TOHOシネマズ市川
  • 『ファースト・マン』 を鑑賞しました。 期待値高かったが、、、 【ストーリー】  幼い娘を亡くした空軍のテストパイロット、ニール・アームストロング(ライアン・ゴズリング)は、NASAの宇宙飛行士に応募し、選抜される。彼は家族と一緒にヒューストンに移り住み、有人宇宙センターで訓練を受ける。指揮官のディーク・スレイトン(カイル・チャンドラー)は、当時の宇宙計画において圧倒的優位にあったソ連も...
  • 2019.02.22 (Fri) 22:58 | 気ままな映画生活 -適当なコメントですが、よければどうぞ!-
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  •  ファースト・マン・・・・・評価額1750円
  • 彼は、月で何を見たのか。 20世紀の神話となった、アポロ11号の月面着陸。 おそらく世界中のほとんど誰もがその顛末を知っていて、展開の意外性など作りようがない話を、若き鬼才デミアン・チャゼルはどう料理したのか。 アポロ11号船長であり、月面に人類最初の足跡を残したニール・アームストロングを、「ラ・ラ・ランド」に続いてチャゼルとタッグを組むライアン・ゴズリングが演じ、妻のジャネットを...
  • 2019.02.23 (Sat) 23:11 | ノラネコの呑んで観るシネマ
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  •  ファースト・マン
  • 1961年、アメリカ空軍でテストパイロットを務めていたニール・アームストロングは、幼い娘を病で亡くしてしまう。 その悲しみから逃れるように、彼はNASA(アメリカ航空宇宙局)ジェミニ計画(二度目の有人宇宙飛行計画)の宇宙飛行士に応募する…。 人類で初めて月面に降り立った男の、実話から生まれた物語。
  • 2019.02.23 (Sat) 23:27 | 象のロケット
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  •  「ファースト・マン」
  • 1966年、アメリカは世界初の宇宙空間での有人宇宙船のドッキングを行い、1969年、アポロ11号で月面着陸と月表面へ降り立つことに成功。この大事を成し遂げたのが、ニール・アームストロングである。本作はアームストロングが過去の痛みを背負い、仕事に殉じる可能性を現実に突きつけられながら、それらに向き合いつつ遂には月面着陸に成功するまでの軌跡を描いた作品である。「鷲は舞い降りた」「これは一人の人間...
  • 2019.02.26 (Tue) 12:47 | ここなつ映画レビュー