印象派への旅 海運王の夢-バレル・コレクション-

昨今は展覧会もただ開けば良いというものでもなく、芸術家個人の名を冠した○○展はネタ切れ気味、人気だといっても印象派というだけでは関心を引く事は出来ず、更なるインパクトを求められる。強烈なメッセージ、人目を引くコンセプトなどを追い求める主催側の苦悩が見えるような、ラノベ並みに長いタイトルの展覧会が増えて来た。
しかし、何があろうと、絵は静かにそこにある。
絵の本質は変わらない、どんな時でも。絵に逢いに行く、その意味も変わらない。どんなに着飾ろうが、普段着のままであろうが、その美の中心にあるものは変わらない。
スコットランドの海港都市グラスゴー出身の海運王ウィリアム・バレル。彼のコレクションが並ぶのが今回の展覧会。彼のコレクションの影にはアレクサンダー・リードという画商がいた。会場でゴッホが描いた肖像画が見られるが、同じく画商であったゴッホの弟テオとも交流があったそうだ。彼はフランス美術をグラスゴーの美術愛好家に紹介した人物。彼の上客のひとりがバレルであったわけだ。
落ち着いた色彩の絵が多い。声高に叫ぶ絵は見当たらない。思慮深い顔をした絵が多い。それは風景や静物や花や馬や船の絵が多い事にもよるだろう。時の中で飴色が濃くなり、照明もまた控えめであるので、そこにある色は更に夜に近づいていく。
セザンヌにはセザンヌの、ルノアールにはルノアールの、色があり線があり形がある。
そんなありきたりな事も、実に新鮮に目に飛び込んで来る気がするのは、ここがいわゆる気構えてみる美術館ではなく、街中の建物の地下にあるからだろう。たとえばエルミタージュ、日本の国立博物館でもいい。建物に力がある場所は、そこに足を踏み入れるのに、それなりの覚悟がいる。そんな緊張が心地良い時もあるが、そんな気持ちのままに絵を見ても素直に感動が訪れてくれない場合も多々あるのだ。
ドガの踊り子の絵がメインとなっていたのは、知名度と誰もが好感を持ちやすい絵だし、何よりもとても”印象”的な絵だからだろう。
撮影可能なスペースがあるのも最近の特徴らしい。

ギュスターヴ・クールベ 《マドモワゼル・オーブ・ドゥ・ラ・オルド》 1865年 油彩・カンヴァス
教科書などで良く見かける写真のような「波」とは異なる、何処か可愛らしさすら感じる絵。手がちょっと小さすぎる気もする。人物よりも風景などを描く方が好きだったのかな。それとも人を描くと照れてしまう人だったのかな・・などと思いつつ。
ヤーコブ・マリスの「若き芸術家」が気に入った。ジョゼフ・クロホールの馬が気に入った。帰りに絵葉書を買おうとしたがなかった。私の気にいった絵が絵葉書になっている事は少ない。毎度ながら残念だった。

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