映画「空母いぶき」感想

日本が侵略された!その時、立ち向かったのは・・
さすがに原作通りに中国に侵略される日本を描くわけにはいかなかったので、架空のアジア連合的な物が攻めて来た事にしたのだろう。いぶき以外の艦もまた原作とは異なる。執拗なマスコミや、政治的な駆け引きも、それにつれて形を変えている。
それでも監修にかわぐちかいじの名があるのが納得の映画に仕上がっていた。底知れぬ決意を秘めた秋津艦長の西島秀俊がいい。口元の不敵な笑みは、かわぐちかいじの作り上げた彼を髣髴とさせる。新波さんの佐々木蔵之介もいい。
その他も、それらしい顔が多い。邦画では奇跡的に。
ミサイル、魚雷、緊迫した場面が続く。おそらく、戦争から久しく遠いこの国の人々を緊張から解放する為に、ゆるいコンビニの場面を挟んで来るのだろう。中井さんの疲弊しきった店長の能天気ぶりが、ある意味、この国の平和ボケの象徴であり、そのボケのまま人生を送る事を許されている世界の象徴でもあるのだろう。クリスマスに浮かれる裏で起きていた、戦闘と政治と悲劇すら知らずに。
マスコミの使い方、あれは国連の介入のお膳立てのためだろう。九死に一生を得たパイロットが、”人道的”に助けた敵パイロットに射殺されるという悲劇、その敵パイロットを殺そうとした隊員を止めた秋津艦長・・その姿がネットで流され、国連が動いたという流れ。
中国の尖閣諸島の占領、与那国島への侵攻という部分をぼかしてしまった分、やはり物語は軽くなってしまった。艦隊や戦闘機の描き方、それぞれの戦略については詳しい人が見れば色々あるだろう。それでも1本の映画として良くまとまっていたと思う。企画の福井晴敏、脚本の伊藤和典の名前への安心感もやや加味して。
はたして、原作ではどういう幕引きになるのだろうか。さらに興味が湧いて来た。
STAFF
監督 若松節朗
脚本 伊藤和典 長谷川康夫
原作・監修 かわぐちかいじ
音楽 岩代太郎
企画 福井晴敏
配給 キノフィルムズ
CAST
秋津竜太(航空機搭載型護衛艦「いぶき」艦長) 西島秀俊
新波歳也(航空機搭載型護衛艦「いぶき」副長) 佐々木蔵之介
湧井継治(第5護衛隊群群司令) 藤竜也
中根和久(航空機搭載型護衛艦「いぶき」船務長) 村上淳
葛城政直(航空機搭載型護衛艦「いぶき」砲雷長) 石田法嗣
淵上晋(第92飛行群群司令) 戸次重幸
迫水洋平(アルバトロス隊隊長) 市原隼人
柿沼正人(アルバトロス隊パイロット) 平埜生成
井上明信(海幕広報室員) - 金井勇太
浦田鉄人(護衛艦「あしたか」艦長) 工藤俊作
山本修造(護衛艦「あしたか」砲雷長) 千葉哲也
浮船武彦(護衛艦「いそかぜ」艦長) 山内圭哉
岡部隼也(護衛艦「いそかぜ」砲雷長) 和田正人
瀬戸斉明(護衛艦「はつゆき」艦長) 玉木宏
清家博史(護衛艦「しらゆき」艦長) 横田栄司
滝隆信(潜水艦「はやしお」艦長) 高嶋政宏
有澤満彦(潜水艦「はやしお」船務長) 堂珍嘉邦
大村正則(RF-4EJ偵察機ナビゲーター) 袴田吉彦
備前島健(RF-4EJ偵察機パイロット) 渡辺邦斗
垂水慶一郎(内閣総理大臣) 佐藤浩市
石渡俊通(内閣官房長官) 益岡徹
城山宗介(副総理兼外務大臣) 中村育二
沢崎勇作(外務省アジア大洋州局局長) 吉田栄作
赤司徹(外務省アジア大洋州局局員) 三浦誠己
本多裕子(ネットニュース記者) 本田翼
晒谷桂子(本多裕子の上司) 斉藤由貴
藤堂一馬(本多裕子の先輩ディレクター)片桐仁
吉岡真奈(アシスタント) 土村芳
中野啓一(コンビニ店長) 中井貴一
森山しおり(コンビニのアルバイト店員) 深川麻衣
田中俊一(大手新聞のベテラン記者) 小倉久寛
ゴリ押しジャニやYがいないだけで、こんなに面白い映画になるのか。役に合う俳優を配役するだけでいいのだ。そんな当たり前の事が出来ない今の映画の現状は、単なる一観客としては諦めるしかないのかと、今更ながら空しくなる。
西島秀俊さんと佐々木蔵之介さんがいい。やっぱり西島さんはオレガオレガの香川某と一緒じゃない方がずっと良くなる。「きのう何食べた?」の内野聖陽さんもそうだけれど、芝居のやりとりが出来る相手かどうかは大きいと思う。
最後が「沈黙の艦隊」になってしまうのは、かわぐちかいじだからと言うより、あれだけの縛りの中で他の解決策を見つけるのは厳しいからだろう。

ロビーのサイン入りポスター


fc2が不調の際はお手数ですがTB用ミラーブログをご利用下さい
Comments 0
There are no comments yet.
Leave a reply
Trackbacks 4
Click to send a trackback(FC2 User)- この記事へのトラックバック
-
- 劇場鑑賞「空母いぶき」
- レビューは↓ https://plaza.rakuten.co.jp/brook0316/diary/201905240000/ 映画「空母いぶき」オリジナル・サウンドトラック [ 岩代太郎 ]価格:2700円(税込、送料無料) (2019/5/17時点)
- 2019.05.25 (Sat) 05:49 | 日々“是”精進! ver.F
- この記事へのトラックバック
-
- 『空母いぶき』 2019年5月9日 イイノホール
- 『空母いぶき』 を試写会で鑑賞しました。 これは日本のお得意芸ですな。(CGも含めこのくらいが予算の範疇でしょ) 【ストーリー】 20XX年。日本最南端沖で国籍不明の漁船20隻が発砲を開始し、波留間群島の一部を占領して海上保安庁の隊員を捕らえる。日本政府は、航空機搭載護衛艦いぶきをメインにした艦隊を派遣。お互いをライバルとして意識してきた航空自衛隊出身のいぶきの艦長・秋津竜太(西島秀俊...
- 2019.05.25 (Sat) 10:55 | 気ままな映画生活 -適当なコメントですが、よければどうぞ!-
- この記事へのトラックバック
-
- 空母いぶき
- 空母いぶき@東京国際フォーラムホールA
- 2019.05.26 (Sun) 12:44 | あーうぃ だにぇっと
- この記事へのトラックバック
-
- 空母いぶき
- 20XX年12月23日未明。 国籍不明の武装集団が初島に上陸したとの一報が入った。 日本の領土である初島奪還と拘束された海上保安官救出のため、海上自衛隊は戦後初の航空機搭載型護衛艦≪いぶき≫を旗艦とする第5護衛隊群を現場海域へ向かわせる。 その時いぶきには、訓練航海の取材目的で記者が2名乗艦していた…。 軍事エンターテインメント。
- 2019.05.27 (Mon) 01:36 | 象のロケット