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映画「アド・アストラ」感想

☆もるがん☆

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「原作:星野之宣」と言われても違和感ない映画。

この映画を「ジャミラ」だと言った人がいたけれど、むしろジャミラの家族の物語だと思う。でも正確にはジャミラではない。そこには個人的な恨みはない、ただ己の使命に殉じようと静寂と深淵に身を投じた男の苦悩と、偉大な父を持った故に抱えた重みにぎりぎりで耐えて来た息子の姿が描かれている。

音の使い方、画面の色、シチュエーションその他、各所に「2001」を感じる。

宇宙でのドンパチなどの派手さが売りの映画ではない。宇宙空間の空虚と残酷と、国家と個人の葛藤が描かれる映画。ブラピも老けたけれど、深さよりも捨てきれない激しさがあって、この役に合っていた。トミー・リー・ジョーンズも次々と部下に裏切られた老いた英雄の疲弊感が良かった。プルーイット大佐の名優ドナルド・サザーランドはジャック・バウワーで有名なキーファー・サザーランドのお父さん、大ベテランを大切にする映画は何処か行き届いている感がある。

Ad Astra とはラテン語で、To the stars 星々へという意味のようだ。Per ardua ad astra(逆境を越えて星々へ)は学校などの標語に使われているらしい。あちらではラテン語が教養のひとつですものね。

死んだと思っていた父が宇宙の彼方で生きていた。国家はそれを極秘とし、地球で起きている「サージ」という反物質の大惨事の原因が彼だと断定している。かつての父の同僚からそれを知らされた息子ロイは、真実を確かめる為に宇宙へと旅立つ。そこで彼は・・

強引な展開の部分もあるけれど、そこは目的への通過点だから、あまり重要ではない。映画を成立させるために切り取るべき所、切り捨てるべき所の取捨選択の範囲内の事なのだ。人の生死も同じ事だ。国家はすぐに個人を「抹殺」せよと言うのだが、殺したくなくても結果として死者を出してしまう結果になっていく。

途中で救難信号を出す宇宙研究施設に向かう。これは実験動物をなめてはいけないという警告もある。科学が進歩しても人は万能ではないのだ。殺意を持った野生の本能にはかなわない。どんな場合にも”人”そのものが重要なのだ。ミスリード狙いではあるけれど、クルーの資質をロイが見定める場でもある。これが後の悲劇の伏線でもある。

宇宙は底知れぬ場所、人間の狭い認識は容易に飲みこまれていく。その為に安定剤を服用したとしても誤魔化し切れない。そこで起きる事は地球で胡坐をかいている権力者にはわからない。これは定番、そして限られた宇宙船という空間では何が最適かという「冷たい方程式」は常に働いている。

地球と宇宙船の距離よりも離れていた父子の心。その距離を急に埋める事は無理だったとしても、わずかでも接近した時間はあったと思う。宇宙規模で視れば、彗星と地球が接近するほんの一瞬、つかの間の時のようなものだったとしても。そしてまた急速に離れて行った。今度は手が届かない距離へと。

「スター・ウォーズ」は大好きだ。「スター・トレック」も大好きだ。

でも宇宙と人間との関係を静かに語る物語も好きだ。何処であっても人はそんなに簡単には変われない、変われないからこそ、心を病むしか逃げ場がない。それを乗り越える事が出来るのは、何か支えを持つ人間なのだろう。

最後の方のロイの元妻の登場シーン、そのまま星野之宣の絵で脳内再生された。モノトーンの映画ではないけれど、その絵は白い紙にペンで描かれていた。


ポスター/スチール写真 アクリルフォトスタンド入り A4 パターン9 アド・アストラ 光沢プリント

Ad Astra

STAFF
監督 ジェームズ・グレイ
脚本 ジェームズ・グレイ イーサン・グロス
製作 ブラッド・ピット デデ・ガードナー ジェレミー・クライナー ジェームズ・グレイ ロドリゴ・テイシェイラ アンソニー・カタガス
製作総指揮 マーク・バタン ジェフリー・チャン ポール・コンウェイ ソフィー・マス アンソニー・モサウィ ロウレンソ・サンターナ ドン・ユー
音楽 マックス・リヒター
撮影 ホイテ・ヴァン・ホイテマ
編集 ジョン・アクセルテッド リー・ハウゲン
製作会社 プランBエンターテインメント ニュー・リージェンシー・プロダクションズ RTフィーチャーズ キープ・ユア・ヘッド マッドリヴァー・ピクチャーズ
配給 20世紀フォックス

CAST
ロイ・マクブライド ブラッド・ピット
H・クリフォード・マクブライド トミー・リー・ジョーンズ
ルース・ネッガ ヘレン・ラントス
イヴ リヴ・タイラー
トム・プルーイット大佐 ドナルド・サザーランド



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Posted by☆もるがん☆
映画

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  •  アド・アストラ
  • 宇宙飛行士ロイ・マグブライドの父は、地球外知的生命体の探求に人生を捧げた英雄だが、32億キロ離れた太陽系の彼方で行方不明となっていた。 ロイは、父が生きており、しかも太陽系の全てを滅ぼす力を持つ実験“リマ計画”に関わっていた事を知らされる…。 SFアクション・アドベンチャー。
  • 2019.09.25 (Wed) 02:35 | 象のロケット
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  •  アド・アストラ・・・・・評価額1700円
  • その旅の終わりに、答えはあるのか? 「アド・アストラ」とは、ラテン語で「星々へ」の意味。 ブラッド・ピットが自身初の本格SFで近未来の宇宙飛行士を演じ、29年前にある計画のため宇宙探査に出て行方不明となった父を探して、43億キロの遠大な旅に出る。 死んだと思われていた父は、なぜ今行動を起こしたのか? 失われた父性に向かう旅路の果てに、主人公は何を見つけるのか? 「リトル・オデッサ」「エヴァ...
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