映画「最高の人生の見つけ方」感想

ジャック・ニコルソンとモーガン・フリーマンの映画「The Bucket List(2007)」の邦画リメイク。末期がんを宣告された二人が、死ぬ前にやりたいことを実現するために旅に出る物語。
人生の最期に振り返ってみれば、大半の人の人生は平凡なものだろう。だが、その中にも本人にとっては大切なものが数多く詰め込まれているのだ。社会的な成功だけが人生の重要事項ではないのだ。
吉永小百合演じる主婦、北原幸枝はガンの末期。だが我慢する事を美徳として生きて来た彼女には、夫にも子供にも打ち明ける事は出来ない。長女にだけは話そうとするが、現代的キャリアウーマンの長女は「女だから」と何でも押し付ける母に反発して聞こうとしない。長男は引きこもってゲーム三昧、夫は妻は家事をする機械としか思っておらず、姑の世話も当たり前、まったく頼りにならない。
入院先の病院で出会ったのは、大ホテルの女社長剛田マ子。彼女も末期がん。ホストじみた夫はいるが、夫には愛人がいる。会社も乗っ取られそうになっている。それでも気丈にふるまう彼女の救いは忠実な秘書、高田。
まったく異なる世界に暮らし、出会うはずのない二人が出会う。奇妙な友情が産まれる。
重度の糖尿病の少女の落とした「死ぬまでにやりたいこと」リスト。幸枝は少女に返そうとするが、少女の弟は姉が死んだという。退院して帰宅すると、家は散らかり放題。幸枝へのいたわりの言葉もない。
幸枝は「死ぬまでにやりたいこと」を考えてみる。でもなにも出て来ない。それで少女のリストを代りに果たそうと思いつく。マ子も面白がって、一緒に旅をする事になる。大金持ちのマ子の計らいで、プライベートジェットで世界を巡る旅。(このあたりは上手く観客の夢を組み込んでいる。観客は幸枝の気持ちになって楽しめるのだ)カリフォルニアでスカイダイビングをしたり、エジプトでピラミッドを見たり。国内ではリムジンに高級旅館にホテルに。二人の衣裳も次々に変わる。これはマ子が幸枝にも存分にお洒落を楽しませようと大盤振る舞いしたのだと思おう。
すらりとして立ち姿のいい天海祐希、何を着ても絵になる。吉永小百合のしっとりとした着こなしもさすが。なんと70歳のウェディングドレス姿までみせる。それも美しい。さすが大女優。50年越しの夢だったドレスを着て、マ子のお膳立てで結婚式をする幸枝。夫役の前川清が器用な俳優でないのが、逆にしょぼくれた夫らしくて良かった。(家族の和解は、幸枝からマ子へ、マ子から幸枝へ、互いに贈りあう形となっているのがいい)
夫が「来世でもいっしょになって欲しい」と言うのだけれど、ここは幸枝のように同意するかどうか、奥様によって意見が分かれる所だろうけれど。
ももクロのステージ、思いがけずにステージに上がる事になった幸枝とマ子。楽しそうに踊る二人。オタ芸でそれを応援する高田のムロツヨシも面白い。いつもながら達者、要所々々でムロツヨシがいい味を出していた。
旅をする二人、途中でケンカもするけれど、沢山笑いもする。一生分の笑顔を見せて、マ子が先にいってしまう。マ子は幸枝に遺産を残す。幸枝はその遺産を、あのリストの最後にあった項目のために使う事にする。JAXA全面協力、二人の夢が宇宙を旅する。
ラストの幻想の中の宇宙服の二人はご愛敬。
男性から女性にキャストを変更し、吉永小百合を持って来た事で、映画を観そうなシルバーな女性層向けにシフト。見事なマーケティングという事か。ももクロという所に邦画の特徴がにじみ出ているが、上手くそれをはめ込んでいる所は、監督の手腕なのか。脚本もいい。観光旅行もファッションも楽しめて、役者も良くて。吉永小百合世代の観客は来し方を思いつつ涙必須の映画だと思う。そのために(良い意味で)作られた映画。
STAFF
原案:ジャスティン・ザッカム著「最高の人生の見つけ方」
監督:犬童一心
アダプテーション脚本:浅野妙子、小岩井宏悦、犬童一心
音楽:上野耕路
主題歌:竹内まりや「旅のつづき」(ワーナーミュージック・ジャパン)
劇中歌:ももいろクローバーZ「走れ! -ZZ ver.-」(EVIL LINE RECORDS)[6]
エグゼクティブプロデューサー:小岩井宏悦
プロデューサー:和田倉和利
ラインプロデューサー:森徹
CAST
北原幸枝:吉永小百合
剛田マ子:天海祐希
高田学:ムロツヨシ
北原美春:満島ひかり
北原孝道:前川清

fc2が不調の際はお手数ですがTB用ミラーブログをご利用下さい