映画「AWAKE」感想

人間とAIの闘いの影の、かつて共にプロ棋士を目指した二人の物語
子供の頃、将棋の天才と呼ばれた。奨励会(日本将棋連盟の棋士養成機関)に入ると、周りは同じように天才と呼ばれた少年ばかりだった。清田は浅川と出会う。浅川は強かった。挫折はすぐにやって来た。選ばれた真の天才のみがプロ棋士になれるのだと思い知らされる。将棋だけにすべてを掛けてもかなわない夢があるのだと。
将棋を捨てた人生は空っぽに思えた。大学へ行っても友達も出来なかった。ある日、父がPCで将棋のゲームをやっていた。「強い・・」清田はコンピュータ将棋に興味が沸いた。自分でも作りたくなった清田は、人工知能研究会へ入部、変人の先輩・磯野の協力を得て、将棋のプログラム"AWAKE"を完成。"AWAKE"はコンピュータ将棋の大会で優勝、プロ棋士と対戦する事になる。そのプロ棋士とは、かつての奨励会でのライバル、浅川だった。
キャラクターもストーリーも、シンプルな構成の映画。
それだけに何を見せるかにかかって来ます。客寄せパンダで人を集める映画ではない、じっくりと演じる役者を選んでいる。邦画にありがちなコスプレ棒読み学芸会でもなく。当たり前の事を当たり前にしている奇跡的な映画。
どんな世界にも共通の、挫折と再起の物語。
大型予算の映画ではないけれど、上手く場面を作り込んでいます。清田が父子家庭である事、浅川は独身で姉と幼い甥がいる事、大学生活の陰と陽、部室の雑多さ。将棋ファンならお馴染みの将棋会館、鳩森八幡神社が出て来るだけで盛り上がるし、対局の様子、王将戦の罰ゲーム的な小ネタなど、将棋を知る人なら楽しめるネタもいっぱい。コンピュータ好きなら、ディスプレイやPCが物語が進むにつれて進化しているのに興味をひかれるかも知れません。学生映画や自主映画風味が若干漂って来ますが、そこは電王戦の再現などの豪華さでカバーされています。
AWAKEが完成するまでの過程、浅川のプロ世界での苦闘。ゲームあるあるのバグを突いたハメ技で勝敗がついてしまうのはどうかと思いますが、プロなら指さないはずの手、それを指して来たのは、勝つ為になら何でもするのがプロという事なのでしょうか。
将棋電王戦FINAL第5局を題材した映画。
将棋を知らなくても面白い、将棋を知っていればさらに楽しい映画でした。
電王手くん、可愛い。
STAFF
監督 山田篤宏
脚本 山田篤宏
製作 菅野和佳奈
製作総指揮 木下直哉 武部由実子
音楽 佐藤望
撮影 今井哲郎
将棋協力 日本将棋連盟
将棋電王戦協力 dwango、DENSO、DENSO WAVE
プログラミング協力 コンピュータ将棋協会(CSA)
制作会社 キノフィルムズ
製作会社 木下グループ 『AWAKE』フィルムパートナーズ
配給 キノフィルムズ
CAST
清田英一 吉沢亮
浅川陸 若葉竜也
磯野達也 落合モトキ
中島透 寛一郎
磯野栞 馬場ふみか
山崎新一 川島潤哉
堀亮太 永岡佑
山内ひろみ 森矢カンナ
清田英作 中村まこと
吉沢亮がいわゆる陰キャを演じているけれど、これが凄い。基本、イケメンなのに、そのあたりを歩いている陰キャの人に見えるのです。
観る将です。有馬記念の日の鑑賞でした。モデルの阿久津先生は単勝は取ったようで何より。でも少し山Pの匂いがする浅川先生には競馬は似合わないかな。そういえば2017年の最後の人間とAIとの対決の時の佐藤天彦先生、人が指して来ない手を指して来るのが面白いというような事をおっしゃっていて、それと同じようなセリフを清田がいうのが感慨深い。2人を見守る山崎先生、ちょっと遠山先生を思い出してしまいました。良い意味で。
対決から時が流れ、偶然に空港で再会した2人が、浅川の甥である少年を介しながら将棋を指す。それも笑顔で。そう、本来は将棋は楽しいものなのです。ほのぼのと映画館を後に出来て良かった。

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