「証言 羽生世代」大川慎太郎
まえがきにもあとがきにも語られる、第33期竜王戦。無冠となった羽生九段の2年ぶりにタイトル挑戦で盛り上がった。第1局が行われたのはセルリアンタワー能楽堂。立会人は森内俊之九段、佐藤康光会長も同席。羽生世代が顔を揃えた。
昔は将棋指しは無頼漢のイメージがあった。それを変えたのは谷川浩司九段だという。優雅で紳士的で最年少21歳で名人に、後に十七世名人となった。その後に来たのが羽生善治。次々とタイトルを獲得、若き天才の活躍は、世間の目を集め、将棋の世界を一気に広げた。永世七冠、タイトル獲得通算は99期。第33期竜王戦は100期目になるかと注目された。惜しくも豊島竜王に敗れはしたが。
羽生善治という天才の前に生まれた者、同世代、後に生まれた者。誰もが人よりも将棋の才を持ち、プロとして人に知られた者達。その彼らが語る羽生善治と将棋の世界。
あっさりと抜き去られた者も、必死でしがみつく者も、後から来て追いつこうとする者も、羽生と羽生世代は何故こんなにも長きに渡り強くあるのかを、己と引き比べつつ分析し、語っていく。真摯に将棋と向き合って来たからこそ解る羽生の凄さ、そして影響力。羽生本人はいつも穏やかで声高に何かを主張する事はない。だが彼の存在が周囲を変えていったと、彼らは言う。自分は羽生という天才に引き上げられたのだと、羽生がいたからこそ、今の自分があると。
誰もが羽生を語る時、熱を帯びる。その熱を上手に伝えてくれる文章。それぞれの立ち位置を読者に明確に伝える事も忘れない。さほど将棋に詳しくなくても(詳しければ一層)、羽生善治と彼らの関係が理解出来る構成がいい。
将棋は20代後半がピークだという。羽生世代も50代、さすがの羽生にも陰りが見え始めている。その今だからこそ、読む価値のある一冊。

セルリアンタワー東急ホテル「かるめら」特選かるめら黒印度カレー(羽生九段の昼食と同じもの)

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