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師弟 (棋士たち 魂の伝承) 野澤亘伸

☆もるがん☆

師弟 (棋士たち 魂の伝承)
野澤亘伸
光文社
2021-02-09


史上最年少でタイトルを取った高校生棋士藤井王位棋聖。彼と杉本昌隆師匠の事は、ワイドショーでも良く取り上げられるし、杉本師匠もTVに良く見かけるので、将棋を知らなくても何となく知っている人も多いのではないだろうか。

プロ棋士は自身の対局の他に、将棋の普及にも励まねばならない義務があるらしい。高校生の藤井君が将棋に専念出来るように、杉本師匠は自らが前に出る事で、弟子を守っているのだと聞く。勿論、それも限られた間だけだ。高校を卒業すれば、今までのように師匠が身を挺して守る事は出来なくなる。欲にまみれた連中が群れなして襲って来るかもしれない。聡明な藤井君といえども、手に負えない事もあるかも知れない。だが、あの師匠ならそれでも出来うる事はしてくれるだろうという気がする。

そんな信頼感。

6組の師弟の心の奥には、それを感じる。師匠の思いが通じなかったり、弟子の気持ちが伝わらない時もあっただろう。将棋の師匠となる事は、弟子の一生をも背負う覚悟がいる事なのだ。だがまだ大抵は幼い子供である弟子には、ぴんと来ない。将棋の道も険しさもプロになる厳しさも。そんな葛藤の中で、ある師匠は根気強く、ある師匠は静かに見守り、ある師匠は寄り添い、それぞれに弟子を育てていく。

大人になって初めて、師匠の想いの深さを知り、恩義を感じる事も多いだろう。師に受けた恩を今度は自分が返す番になるのだと、そして将棋という世界を次に伝えようとする者もいるのだろう。

対局は孤独だ。盤上で戦うのは己のみだ。

そんな道を進む中で、何処かで見ているまなざしがあるというのは、どんなにか心強い事だろう。そのひとつが師匠という存在なのだと思う。

どの師弟の物語も深い。

書く側としては、取材した素材の取捨選択に迷ったのではないだろうか。あれも見せたい、これも読んで欲しいと。そしてどういう構成が相応しいのかと。だから時として詰め込み過ぎな気もするが、それも彼らの物語の中に伝えたい事が多すぎるゆえの筆のすべりなのだと、好意的に解釈したい。

文庫版は、巻末に、師匠たちの弟子自慢の対談が収録されている。師匠たちの師匠の話、弟子との話、そして師弟制度の今後についてなど、興味深い内容となっている。



tk

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Posted by☆もるがん☆
将棋

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