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映画「いのちの停車場」感想

☆もるがん☆

いのちの停車場

後味の悪い映画。美談にしようとしてはいるが。

老人は視野が狭くなる。1分で出来た事に15分かかるようになる。そのために周囲を見る余裕がなくなる。仕方ない事なのだ。それが老いというものだ。だからといって、親にそんな権利があるのか?子供に積み上げて来たキャリアを捨てさせ、残りの人生を犯罪者として生きろという権利が。

原作がどうなっているかはわからないが。

「患者に寄り添う」事と、感情に流される事は別物だと割り切らないと、本人が壊れてしまう。その典型がここでは野呂という青年になる。彼は医師をめざす事になるが、医師でないのに医療行為をするという法律違反をした人間に、医師免許が与えられるかどうか疑問ではある。

数件の在宅医療を連続して描いていくので、どうしてもポツポツとブチ切れになって、内容が薄くなってしまった。主人公の白石咲和子は善人として描がこうとされているが、元の職場では煙たがれている人物だったようだし、いきなり啖呵を切って辞職というのも、性格に問題がある気がする。結局は原因となった野呂青年も病院を辞職する羽目になる。何も解決しないで「私さえ犠牲になれば」的な悲劇のヒロイン体質にしか見えない。

それが、親の望む安楽死を決行するという結末に結びつく。

一番狡いのは、それを事前に仙川医師に告げている事だ。懺悔のつもりかもしれないが、仙川医師を共犯に巻き込むようなものだ。「私は正しい」という証人にしようとでもするつもりだったのか、「崇高で意識の高い私」を自慢したい気持ちが抑えられなかったのか。

日本では安楽死は違法。だとしたら、合法で死ねる場所を探すなど、他に方法を考えるべきではなかったろうか。他人の患者には最高の治療を探すのに、親にはその努力をしないのか。

善人の裏の偽善者ぶりが鼻をつくのだ。

むしろ若さゆえに、善人であろうとする野呂青年が全体として目立って来る映画になっている。看護師との淡い恋じみた描写はあるが、そこはどちらかといえば、看護師の方の下心が強いのが伝わってくる。

あまりにも薄っぺらいと感じるのは、私自身が終わりない介護の最中にあり、病院勤務の経験もあるからというものあるだろう。何か歯がゆい思いばかりを繰り返す内容だった。事実は小説よりも・・は、大抵の場合は真実だし、作りものに贅沢を言うなという事もあるだろうが。

久々に映画館が開館になって、やっと映画が観られる事に対しての期待が大きすぎたというのもあったかも知れない。

金沢もあまり美しいとはいえない。せっかくの観光都市、もっと良い景色を映せば良いのに。

吉永小百合、そろそろイメージの転換期に来ている気がする。いつまでもお姫様ではいられない。予告の科捜研の映画の沢口靖子を見ても思った。時分の花というやつだ。まだまだ存在感があるだけに、美しく別の花に変貌するのを見せて欲しい気がする。


いのちの停車場 (幻冬舎文庫)

STAFF
監督 成島出
脚本 平松恵美子
原作 南杏子
製作 冨永理生子
製作総指揮 岡田裕介 村松秀信 西新
音楽 安川午朗
主題歌 西田敏行「いのちの停車場」
撮影 相馬大輔(J.S.C.)
編集 大畑英亮
制作会社 東映東京撮影所
製作会社 「いのちの停車場」製作委員会
配給 東映

CAST
白石咲和子 吉永小百合
野呂聖二 松坂桃李
星野麻世 広瀬すず
若林祐子 南野陽子
宮嶋一義 柳葉敏郎
寺田智恵子 小池栄子
江ノ原一誠 伊勢谷友介
柳瀬尚也 みなみらんぼう
並木徳三郎 泉谷しげる
中川朋子 石田ゆり子
白石達郎 田中泯
仙川徹 西田敏行


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Posted by☆もるがん☆

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