劇団☆新感線 いのうえ歌舞伎『狐晴明九尾狩』ライブビューイング

2021年劇団☆新感線41周年興行秋公演 いのうえ歌舞伎 『狐晴明九尾狩(きつねせいめいきゅうびがり)』ライブビューイング<昼公演>観て来ました。
この国を支配せんと大陸からやって来た九尾の狐。その野望を阻止せんとする晴明。互いに策を弄し、裏の裏まで読む知恵比べ。宮中の貴族達は欲望のままに裏切り裏切られ、都のあやかしもまた争いの嵐に巻き込まれていく。
乱れに乱れた世に終止符を打つ鍵となったのは、兄弟の如く育てられた晴明と利風の絆。
歌にダンスに殺陣に、衣装も仕掛けもきらびやかに、けれんみたっぷりのいのうえ歌舞伎。繰り返される急転直下、誰かの情けが誰かをほだし、心は離れてはまた絡み合い結ばれて、ひとつとなって強敵へと立ち向かう力となる。
晴明は紫、利家は白。役柄に似合う色選びも素晴らしい。
晴明は様々な作品で幾度となく語られた人物だけに、見ている側にもある程度の知識はある。そこはそれにまかせ、新しい物語を作り上げていくのは、たやすいようで難しい。ありきたりになってしまいがちな罠。そこは狐の子と言われた晴明に、同じ狐をぶつける事で、中心が出来てくる。後は周囲を描いていく。陰陽師も人間もあやかしも、等しい存在として。
人間とあやかしの中間点として陰陽師を置くのも面白い。その最高峰のふたり、加茂家の跡取りの利風、才能は利家を凌駕するが傍系である為に一歩引いて波風を避ける晴明。そして野の陰陽師の道満もまた暗躍する。
中村倫也さんの食えない晴明も良かった。向井理さんの利家(九尾の狐)も「SPEC」での北大路欣也”兄者”との時代劇調の会話を思い出す。あの悪役がさらに強大になり、白い尾を振りたてて君臨しているようで。
タオはどんべえのCMの為に(というか狐なのもそれが元ネタだろうけれど)うどんでイジられてはいたけれど、舞台を重い気分に陥らせない爽やかさをふりまいていた。弟のランは殺陣が素晴らしいと思ったら、劇団朱雀の早乙女兄弟の弟さん。お兄さんも新感線の舞台でお見かけしましたが、やはりお二人とも舞台映えしますね。
検非違使の尖は、人外のものや陰謀渦巻く中で、真っ当な人間として生きようともがく人。彼の存在が荒唐無稽に傾きそうな物語を、現世につなぎ止めていたような。相棒の青木くんとはまったく異なる姿、役者さんはやはり凄い。
舞台を支えるいつもの顔ぶれの安心感。裏切る人は裏切るし、クズな人はクズだし、改心する人はするし、体育会系の人は身体を張るし、殺陣の達人は良い見せ場を作るし。下品も品のうち、それも舞台を飾る花、それもまた欠かせない役者の方々なのです。
粟根まことさん大好きな身としては、出番が多かったのは嬉しい。良いばかりの人ではないのも嬉しい。てのひらクルクル、因果応報バンザイなのです。
出来るものならリピートしたい舞台でした。
新型コロナの影響で、遠出もはばかられ、芝居見物はずっとご無沙汰でした。今回は近場の映画館でライブビューイングがあると知り、抽選に申し込んでみました。当選して良かった。演ずる場所から遠く離れているのは寂しいけれど、大きなスクリーンに映し出される映像は、安い席なら見られない役者のアップもあり、臨場感もあり。
何よりも(今回が特別かとは思うけれど)劇場は満席でぎっしりなのに、映画館はひとつ置きの指定席なので、ゆったりと舞台が観られ、隣に気兼ねせずに飲み物等も楽しめた事。勿論、一期一会の舞台の雰囲気を100%再現出来たわけではないにしても、アンコールの時もスタンディングオベーションの観客を避けてのサービスショットもありで。
ライブビューイングも悪くないと思った次第です。

作 中島かずき
演出 いのうえひでのり
安倍晴明(あべのせいめい)中村倫也
賀茂利風(かものとしかぜ)向井理
尖渦雅(とがりのうずまさ)浅利陽介
虹川悪兵太(にじかわあくへいた)竜星涼
桃狐霊(タオフーリン)吉岡里帆
藍狐霊(ランフーリン) 早乙女友貴
蘆屋道満(あしやどうまん)千葉哲也
元方院(げんぽういん) 高田聖子
藤原近頼(ふじわらのちかより)粟根まこと
橘師師(たちばなのもろもろ)右近健一
又蔵将監(またくらしょうげん)河野まさと
油ましまし(あぶらましまし)逆木圭一郎
藻葛前(もくずのまえ)村木よし子
貧乏蟹(びんぼうがに)インディ高橋
白金(しろがね)山本カナコ
ひだる亀(ひだるがめ)磯野慎吾
出殻段八(だしがらだんぱち)吉田メタル
蛇腹御前(じゃばらごぜん)中谷さとみ
信楽丸(しがらきまる)保坂エマ
牛蔵(うしぞう)村木仁
滝口帯刀(たきぐちたてわき)川原正嗣
洛外藤次(らくがいとうじ)武田浩二

fc2が不調の際はお手数ですがTB用ミラーブログをご利用下さい
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