NHKドラマ「岸辺露伴は動かない」4-6 感想

前回は泉京香の恋人が3つの話を繋ぐ橋だったとすれば、今度は露伴先生の買った土地がそれ。妖怪は「場所」に憑く。
(4)「ザ・ラン」
露伴は会員制のスポーツジムで橋本陽馬という若い男と出会う。陽馬は駆け出しのモデルで、事務所の社長から「体を作れ」と指示されてジムに通う、無気力でつかみどころのない青年だった。だがこの日を境に陽馬はランニングにのめり込むようになり、走りに対する執着は次第に常軌を逸していく。ある日、久しぶりに露伴の前に姿を見せた陽馬は見違えるほど自信に満ちあふれていた。そして陽馬は、露伴にある勝負を提案する。
アニメでも作られたエピソード。
原作とは異なるシチュエーションなのは、実写として成立させる為。どうしても実写にしてしまうと無理があるのは仕方ない部分もある。しかしその中でもボルダリングに改造された部屋の作りこみは凄い。そして露伴先生が「ヤバい」と思うほどに「走る身体」に変貌を遂げていく陽馬の過程の描かれ方もいい。役者さんも大変だな。
邪魔者は容赦なく排除していく陽馬。排除されかけて、露伴先生もちょっと反省したらしい。自分の「好奇心」を、ほんのちょっとだが。
(5)「背中の正面」
露伴の家にリゾート開発を請け負う会社に勤める男、乙雅三が尋ねてきた。家の中に招き入れると、男はなぜか背中を壁につけたまま、ずりずりと不自然なかっこうで入ってくる。靴を脱ぐときも、椅子に座るときも、紅茶を飲むときも、愛想笑いをしながら、男は決して露伴に背中を見せようとしない。その奇妙な行動に猛烈に好奇心をかきたてられた露伴は策を弄して無理やり男の背中を見てしまう。すると背中を見られた男を異変が襲う。
猿之助さんの怪演。
今回も「好奇心」を反省した方がいい露伴先生。見てはいけない背中を見てしまった為に、妙なものに憑りつかれてしまった露伴先生。それでも原稿を描こうとするのが楽しい。締め切りは何としても守る。
六壁坂へ「それ」を捨てに行こうとする露伴先生。背中を見られない為に苦労しながら。背中の「それ」は邪魔する。「それ」から逃れる方法が、冒頭に繋がるわけで。
(6)「六壁坂」
露伴は妖怪伝説を取材するためだけの理由で六壁坂村の山林を買い破産してしまう。財産よりもネタが大事な露伴は妖怪伝説の謎を追って京香と村を訪れるが、手掛かりは見つからない。そんな時、露伴の前に現れたのは村一番の名家の跡取り娘、大郷楠宝子だった。楠宝子は露伴が村を訪ねた理由を探ってくるが、自らも何かを隠しているようだ。楠宝子をヘブンズ・ドアーで読んだ露伴は、楠宝子と六壁坂にまつわる驚がくの真実を知る。
ラストは、とうとう六壁坂へ。
露伴先生は、村一番の名家の跡取り娘の大郷楠宝子の過去を「読んで」しまう。家を守る為に彼女が犯した罪、だがその裏に露伴が探し求めたものが・・単なる殺人事件の隠蔽ではなく、そこに怪異を混ぜて来るのが並でない所。
これの原作を読んだ時は怖かった。
また露伴先生の「好奇心」が、先生を危機に陥れる。しかし泉京香は妖怪にも敬遠されるのか。さすがに血などの描写は控え目だった。それでも伝わるものはあるのだけれど、底知れぬ不気味さは目減りしてしまったかも。
露伴先生の「デザイン」も、高橋一生が在る域に到達してしまったようだ。泉京香の奇抜なファッションも。やはり前回の3話の成功が、今回のドラマの安定性を生んだのだろう。露伴先生=高橋一生は、シャーロック・ホームズ=ジェレミー・ブレット的な、はまり役になるのだろう。
高橋一生は原作そのものの露伴先生になり切るのに身心をかけ、ゲスト俳優も恐ろしいまでに露伴先生の世界の住人になりきって行く。観ている側も、一挙手一投足も見逃せない気分になって、削り取られていく。背中のはがれる音がバリバリと己の中から響いて来るような気持ちになっていく。
制作陣の露伴愛の深さも、今回の3作にも溢れまくっている。「六壁坂」の難易度は高かったと思うし、どうしても越えられない「境界」を感じてしまう事もあったが。それでも、もし次回があるのなら。
また露伴先生の自信と好奇心たっぷりで、ちょっと反省する姿をドラマで見たい。
STAFF
原作:荒木飛呂彦「岸辺露伴は動かない」(第4話、第6話)「ジョジョの奇妙な冒険」(第5話)
脚本:小林靖子
音楽:菊地成孔/新音楽制作工房
演出:渡辺一貴
撮影:山本周平、田島茂
照明:鳥内宏二
録音:高木創
美術:磯貝さやか
編集:鈴木翔
音声:藤林繁
スタイリスト:羽石輝
衣裳制作:玉置博人
ヘアメイク:荒木美穂
映像技術:大西悠斗
VFX:菅原悦史
音響効果:谷口広紀
人物デザイン監修:柘植伊佐夫
制作統括:斎藤直子、土橋圭介、平賀大介
制作:NHKエンタープライズ
制作・著作:NHK、ピクス
CAST
岸辺露伴 高橋一生
泉京香 飯豊まりえ
橋本陽馬 笠松将 駆け出しのモデル
乙雅三 市川猿之助 背中を見せない男
大郷楠宝子 内田理央 六壁坂村の旧家の一人娘
声 櫻井孝宏
菊地成孔さんの音楽も相変わらず良いです。

fc2が不調の際はお手数ですがTB用ミラーブログをご利用下さい
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