fc2ブログ

シネマ歌舞伎「桜姫東文章 下の巻」感想

☆もるがん☆

sa

仁左衛門、玉三郎 36年ぶりの奇跡の舞台

僧であった清玄は、桜姫の不義の相手として濡れ衣を着せられ、寺を追われてしまう。かつて愛した稚児の少年・白菊丸の生まれ変わりである桜姫への執念を抱き続ける清玄は、今は病み衰え、弟子だった残月と桜姫に仕えていた長浦のいる庵室に身を寄せている。しかし、残月と長浦は、金欲しさに清玄を殺すと、墓穴掘りとなった権助に後始末を依頼。そんななか、女郎とし て売りに出された桜姫が連れて来られ、桜姫と権助が再会するのだった。一方で雷が落ちた衝撃から、清玄は息を吹き返し...。

毎度の偶然は必然、因果応報が何処までも人生を狂わせていく物語。

再会した権助の為に女郎として身を堕とした桜姫。

権助の女房にふさわしくなる為に、あえて伝法な口調でものを言う。玉三郎が凄い。その時々で姫と下賤の態度と口調を自在に演じてみせる。その中で下賤になりきれない姫の素地を感じさせるのも凄い。一度はどん底まで堕ちて、最後に権助が家宝を盗み、父と弟を殺した仇だと知った途端に凛とした姫の態度を取り戻す。だが権助を酔わせて懐の家宝を取り戻そうと一計を案じる時は、また悪党の女房らしいふりもする。煌びやかな赤姫の姿(衣裳も素晴らしい!)ばかりが印象的に思えるけれど、どんな時でも観るものを魅了してくれる。

一番の功労者は仁左衛門。とにかく早変わりで清玄に権助に、挙句の果ては幽霊にまでなってしまう。舞台の上にいない時でも支度にと動いているはずで、御歳を考えればかなりの重労働。それでも高貴な僧侶と悪党の演じ分け、大団円では吉田家の再興を認める役人として綺麗な姿を見せて終わるのは、とてつもないファンサービスと言えるでしょう。

仁左衛門さん、素敵です。

怪談の要素も沢山入っているのも見所のひとつ。毒を盛ったり、死んだはずの清玄が雷で生き返ったり、墓として掘った穴に落ちて這い上がると包丁が刺さっていたり。誇張された扮装や小道具や血のりが虚構の世界の幽霊を際立たせてくれる。刀を振り回してもそこは様式美ですよ。普通の殺陣とはまた違う。美しいかたちがあってこそ。照明もまた考え抜かれて。白塗りの顔も衣裳の色も役者のシルエットも一番に映えるようにと。

誰も赤ん坊に関心がないのが凄い。今でこそ毒親だの虐待だのとニュースになるけれど、この作品が作られた1800年代は当たり前に邪魔になったら間引く世界。捨て子に金がついて来たので引き取る権助、桜姫も関心を持たない。姫は無慈悲に赤ん坊を捨ててますから。これは自分で赤ん坊を育てるという事を知らないお姫様育ちという事情もあるかも知れないけれど。そしてその赤ん坊が憎き仇の子供だとばかりに刀で刺し殺してしまう。え?自分の子だけど?まあ、手ごめにされて産んだ子に愛情を持てというのも何ですが。

長さを感じさせない内容。勿論、本物の舞台を観に行くに越したことはないけれど、編集も良くて、舞台全体の流れを感じさせてくれました。酷い舞台中継だとアップばかりになって、舞台全体の景色がまったくわからない場合もある事を思えば、お茶でも飲みながら、ゆったりと映画館で坐って観るのも、また別の趣があって。

冒頭の仁左衛門と玉三郎のインタビューがお得感。協力に八芳園とあったのでインタビューの場所はあそこでしょうかね。目黒駅の界隈は八芳園に雅叙園、庭園美術館など、雅な場所も多いですね。

配役

清玄/釣鐘権助 片岡 仁左衛門
葛飾のお十:片岡 孝太郎
粟津七郎 中村 錦之助
奴軍助 中村 福之助
吉田松若 片岡 千之助
判人勘六:嵐 橘三郎
局長浦 上村 吉弥
役僧残月 中村 歌六
白菊丸/桜姫 坂東 玉三郎

上演:2021(令和3)年6月 歌舞伎座
シネマ歌舞伎 公開日:2022年4月29日 上映時間:138分


上の巻は赤ん坊の泣き声がおもちゃのトラの赤ちゃんみたいだったのが、下の巻では人間の赤ちゃんに近づいていたような。

ブログランキング・にほんブログ村へ
fc2が不調の際はお手数ですがミラーブログをご利用下さい

Comments 0

There are no comments yet.

Leave a reply