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映画「ダウントン・アビー/新たなる時代へ」感想

☆もるがん☆

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移ろいゆく時代の中で伝統を守るダウント・アビーに、また事件が・・

華やかな結婚式から始まるのがいい。

フランスのモンミライユ侯爵の遺言に、先代グランサム伯爵夫人ヴァイオレットに南仏のヴィラを贈ると書かれていた。ヴァイオレットはそのヴィラをシビーに譲るという。何故、侯爵はそんな遺言をしたのか。クローリー家の人々はその真意を確かめるため、南仏へと向かう。

一方、ダウントン・アビーで映画撮影をしたいという申し出に一族はゆれる。映画などという下劣なものに使われるなんてという家族を、傷んだ屋根の修理費が欲しいメアリー達が説得する。一番面倒を起しそうなカーソンを追い払うため、おだてて南仏に行かせてしまうのも面白い。何事も英国が一番の男が仏蘭西でもそれを押し通すのが楽しませてくれる。

英国と仏蘭西と、二国に分かれた家族と使用人の様子が、優美な音楽と共に描かれるのがいい。

重厚な屋敷内に異分子の映画関係者が入り込む。だが撮影に興味しんしんの住人もいる。バーバー監督はメアリーに気がある。スターのマーナは美人だが思い上がって性格が悪い。人当たりの良いガイは何かを隠しているようだ。

無声映画からトーキーへ移行しつつある映画の世界の葛藤も描かれる。その中で、思わぬ才能を発揮するお馴染みの人々が面白い。

南仏の海辺の美しいヴィラでは、当時の上流階級の世界が繰り広げられる。現モンミライユ侯爵に兄として扱われ、戸惑うグランサム伯爵。自分が母と侯爵の不倫の子だとすれば、今までの価値観も存在意義も崩れ去ってしまう。そんな事とは知らず、トムとルーシーは娘が素敵なヴィラの持ち主となったのを喜ぶ。

やがて先代侯爵の片思いと判明、グランサム伯爵はじめ一同は胸をなでおろす。映画撮影も成功、マーナもデイジーたちの励ましで女優としての自信を取り戻す。ガイはバローに付き人になってくれるように言う(二人は当時は禁断の恋仲となる)。その他にも幾つものカップルが生まれる。

そんな幸せに包まれたクローリー家だが、ヴァイオレットの容態が急変。ダウントン・アビーは偉大なる女主人を失ってしまう。長いドラマの中で象徴的な存在だった先代グランサム伯爵夫人の死は、ひとつの時代の終わりを告げるものでもあった。

黒い車に載せられて運ばれていく棺。先日のエリザベス女王の葬儀を思い起こさせる。家族も使用人も村人も左右に並んで棺を見送る。

トムとルーシーの新しい赤ちゃんがダウントン・アビーにやって来る所で映画は終わる。希望のある良いラスト。

ダウントン・アビーで繰り広げられて来た、優雅でありながらシビアでもある、数多くの人間ドラマ。これが大団円となるのだろうけれど。テンポ良く眼に良く耳に良く。鑑賞後には美味しい紅茶をいただきたくなる映画。


Downton Abbey: A New Era

STAFF

監督 サイモン・カーティス
脚本 ジュリアン・フェロウズ
製作 ギャレス・ニーム リズ・トラブリッジ
撮影 アンドリュー・ダン
製作会社 カーニバル・フィルムズ フォーカス・フィーチャーズ
配給 ユニバーサル・ピクチャーズUK フォーカス・フィーチャーズ 東宝東和

CAST
ロバート・クローリー〈グランサム伯爵〉 ヒュー・ボネヴィル 玉野井直樹 一家の主
コーラ・クローリー〈グランサム伯爵夫人〉エリザベス・マクガヴァン 片貝薫 ロバートの妻
ヴァイオレット・クローリー マギー・スミス 一城みゆ希 ロバートの母
ロザムンド・ペインズウィック サマンサ・ボンド 茜部真弓 ヴァイオレットの娘
メアリー・タルボット ミシェル・ドッカリー 甲斐田裕子 伯爵の長女
ジョージ・クローリー オリヴァー・バーカー メアリーと故マシューの息子
キャロライン・タルボット ビビ・バー メアリーとヘンリーの娘
イーディス・ペラム〈ヘクサム侯爵夫人〉 ローラ・カーマイケル 坂井恭子 伯爵の次女
バーティ・ペラム〈ヘクサム侯爵〉 ハリー・ハデン=ペイトン 長谷川敦央 イーディスの夫
マリゴールド エヴァ・サムズ 森永麻衣子 イーディスの娘
トム・ブランソン アレン・リーチ 星野健一 故三女シビルの夫
ルーシー・ブランソン(旧姓スミス) タペンス・ミドルトン 藤田曜子 トムの新妻
シビル・“シビー”・ブランソン フィフィ・ハート 故三女シビルとブランソンの娘
モード・バグショー イメルダ・スタウントン 小宮和枝 伯爵の従妹、メアリー王妃の女官
イザベル・グレイ〈マートン男爵夫人〉 ペネロープ・ウィルトン 水野ゆふ マシューの母
リチャード・“ディッキー”・グレイ〈マートン男爵〉ダグラス・リース 及川ナオキ イザベルの夫

トーマス・バロー ロバート・ジェームズ=コリアー 三上哲 執事
チャールズ・カーソン ジム・カーター 中村浩太郎 前執事
エルシー・カーソン フィリス・ローガン 沢田泉 家政婦長、カーソンの妻
ジョン・ベイツ ブレンダン・コイル 谷昌樹 伯爵付きの従者
フィリス・バクスター ラクエル・キャシディ 森本73子 伯爵夫人付きの侍女
グラディス・デンカー スー・ジョンストン 伊沢磨紀 ヴァイオレットの侍女
アンナ・ベイツ ジョアン・フロガット 衣鳩志野 メアリーの侍女
アンディ・パーカー マイケル・C・フォックス 虎島貴明 下僕、デイジーの夫
アルバート チャーリー・ワトソン 角田雄二郎 下僕
ベリル・パットモア レズリー・ニコル 美々 料理長
デイジー・パーカー ソフィー・マクシェラ 中司ゆう花 料理長助手
ジョセフ・モールズリー ケヴィン・ドイル 池田ヒトシ 元下僕/現校長

ジョージ・マレー ジョナサン・コイ 駒谷昌男 伯爵の弁護士
リチャード・クラークソン デイヴィッド・ロブ 板取政明 医者
アルバート・メイソン ポール・コープリー 佐々木薫
バンプトンの教会の司祭 アラステア・ブルース 松川裕輝

ジャック・バーバー ヒュー・ダンシー 東地宏樹 映画監督
マーナ・ダルグリーシュ ローラ・ハドック 雨蘭咲木子 サイレント映画スター
ガイ・デクスター ドミニク・ウェスト 丸山壮史 ハリウッド俳優

モンミライユ侯爵 ジョナサン・ザッカイ 羽野だい豆
先代モンミライユ侯爵夫人 ナタリー・バイ ヴァイオレットの旧友の妻


高口里純自選名作集 : 13 伯爵と呼ばれた男3 (ジュールコミックス)

高口里純の「伯爵と呼ばれた男」。映画が希望と悪夢が入り混じった世界だった頃を描く名作。苦悩するマーナの姿にトーキーとなって声と容貌がかみ合わずに堕ちて行ったスターのエピソードを思い出す。

米国英語、英国英語、貴族のアクセントの違いなども面白い。

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