映画「レジェンド&バタフライ」感想

信長(レジェンド)と帰蝶(バタフライ)
東映70周年と銘打っているだけに豪華な作り。セットも衣裳も見事なもの。役者も良い人を使っています。安土城の再現も素晴らしい。合戦の様子がほぼない代わりに、領土や領民、城内の暮らしなど、この手に良くあるチープさを感じさせない出来なのが嬉しい。
簡単に言うなら、バカ殿キムタクが女房に尻を叩かれて出世する話。
歴史の要所々々をポツンポツンと取り上げ、信長と濃姫(=帰蝶)のラブストーリーだけに絞ったのがわかりやすくて良かったですね。最初は互いに反発、そしてだんだんと心を開くものの、ツンレデ同士は意地を張り合いすれ違い、離縁する事になる。だが妻がいなくなったとたん、元のふぬけになった信長、7年後に病に倒れた濃姫に「そばにいて欲しい」と呼び戻す。そして「今度戻ったら行こう」とフラグ立てまくりの、濃姫の夢だった南蛮への船出の約束。行き先は本能寺では、これが今生の別れとなるのは解り切った事。
・・と思いきや、本能寺の奥に抜け道が?そこから脱出?南蛮への船出?濃姫待望のふたりの子供が?
だが歴史は変えられない。さすがにパラレルワールドも異次元も転生ネタもなし。そのあたり、最近は寒いギャグをドヤ顔でぶち込むのが作家性と勘違いした作品が多い中、コミカルな描写は抑えて、映画の格を守った辺りはさすが記念作品。
町人に身をやつして京の町をお忍びで歩く信長と濃姫。
市で信長に買って貰ったかえるの置物を、その後もずっと大切にする濃姫。そして子供に財布を掏られ、今でいうスラム街のような所に迷い込み、そこで起きる惨劇。襲って来る貧民を斬りながら、何とか逃げ延びる二人。そこで何かを感じ、貧しい人々に対して、上に立つ者として何かするのかと思いきや、そういう政治的な事は一切ありません。そういう事を入れてしまうと、物語がぶれてしまう危険性があるという事でしょう。
国と民の命を背負ってその重みに潰されそうになりながら耐えている信長。赤子の命ひとつで嘆いていられないと、信長が素っ気ない事を言うのは、むしろ本音を言えるのが濃姫だけだからとも言えるのですよね。家来にはそんな弱音を吐けないですものね。
濃姫が離縁を申し出る場面も良いです。蝋燭を並べて中央に聖母子の絵(エルミタージュで見たイコンを思い出しました)、南蛮人がリュートを奏で歌う。
最期の本能寺、光秀が信長を討った理由は所説ありますが、魔王として君臨する信長を敬愛していた光秀としては、部下の欠伸も咎めなくなった位に緩い性格に堕落してしまった信長が許せなかったのかも知れません。せめて魔王としての名声が消え失せないうちに、伝説になって欲しかったのかも。
ファッションショーの如く、何度も衣裳を着替える信長も見所のひとつ。
THE LEGEND & BUTTERFLY
STAFF
監督 大友啓史
脚本 古沢良太
製作 須藤泰司 井元隆佑 福島聡司 森田大児
音楽 佐藤直紀
撮影 芦澤明子
編集 今井剛
制作会社 東映京都撮影所
製作会社 「THE LEGEND & BUTTERFLY」製作委員会
配給 東映
CAST
織田信長 木村拓哉
濃姫 / 帰蝶 綾瀬はるか
福富平太郎貞家 伊藤英明
各務野 中谷美紀
斎藤道三 北大路欣也
明智光秀 宮沢氷魚
森蘭丸 市川染五郎
木下藤吉郎/ 豊臣秀吉 音尾琢真
徳川家康 斎藤工
滝川一益 増田修一朗
丹羽長秀 橋本じゅん
柴田勝家 池内万作
林秀貞 本田大輔
織田信秀 本田博太郎
平手政秀 尾美としのり
綾瀬はるかさんの凛とした濃姫も良かったです。平太郎貞家の抑えた男気も。

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